タワワに飛びつくのは男のサガなので暖かい目で見守ってください!
「うわあぁぁぁぁぁぁっぁぁぁ!!!!!」
「あーはっはっはっ!」
「止まれ! 止まれぇぇぇ!」
「むーりでぇすぅぅぅ」
「もうちょっとゆっく――、うぎゃぁぁぁぁ!!!」
俺は右腕をがっしりとホールドされて、車よりも新幹線よりも速く空を駆け抜ける。月から来た時はまっすぐに一直線だったのに帰りはわざとかと思うくらい右往左往して空を楽しんでいるギャル天使。
ぶん殴ってやりたいところだが気絶でもされたら俺は天空から地面まで垂直落下なので、大人しくギャル天使にしがみつくしかない。だから俺はせめてもの恐怖心安定剤として白いタワワに必要以上に顔を突っ込む。
——あぁ……、性犯罪者の気持ちが分かるぅ……。
「……って、新垣クンさすがに――」
「なんだい?! 俺はただもし落下した時のクッションとして君の柔らかい部分をお借りしているだけなんだ! これはあくまで戦略的な生存本能だから君は気にせず空の旅をぜひぜひ満喫していておくれ! 断じて谷間でしたたる汗がいい匂いだとか、吸い付きたいとかそんな不純なことは思っていないから安心してくれ!」
仕方ない。これは仕方ないのだ。
「まぁこれくらいで満足してくれるなら天使としては御の字といったところかな?」
「何の話かな?!」
「あっはははは! 別にとぼけなくていいよ! 素直に私のお胸さんが気持ちいいですって白状すれば――」
「だから決してそんなことは――」
「もぉっと女の秘密を嗅がせてあげるのになぁ~」
「おっぱいが大好きです!」
女の秘密だと……。
そんな神秘かつ夢みたいなことは本当にこの世に存在しているのか?
ただでさえ俺はもう既に心を満たされているのにこれ以上水が俺の器に注がれてしまえばどうにかなってしまうのではないか?!
——見たい。
女の秘密を見てみたいのは勿論だがその味をしってしまった俺は一体どんな進化を遂げるのか? きっと様々な物事の考え方が変わって人類を救う大発明までしてしまうのではないか?
それならば彼女のお誘いを断る理由は一切ない。
俺の性を満足させるという目的はいったんよそに置いといて、俺は今、人類で革命を起こすきっかけのすぐそばに存在している。これを逃す手は俺にとっても人類にとっても悪手だろう。
俺は心の中で大人への扉を開き、顔を胸から下に――。
「あ、やば――」
「ん?」
「……、先に謝っとくね! 本当にごめん!」
ゴンッ!!!!!!
俺がちょうどギャル天使の腰回りまで顔を運んだその瞬間、突如として頭上に衝撃が響き渡る。
「——ほぎゃあ……?」
「あっちゃあ~」
俺はギャル天使を離してしまい、文字通り、スカイダイビングのように地面に垂直落下を始めたのだがあまりの衝撃に体が痺れてしまって思うように動けない。
動けたとしてもどうにかなるものではないのだが、せめてもの抵抗として体を大の字にすることが生存の可能性を高める一番の方法だと思った。しかし無情にも時間と落下は止まらず、強い逆風を受けながらも地上一直線。
もう駄目だ――。
走馬灯のようなものが見えた。
幼稚園、小学校、中学校、高校。そして今はもう顔を合わせることも無くなった友達。
色々なシーンが代わる代わる映し出されていくのだが、正直どれも薄い思い出しか存在しておらずいかにも普通というか全部受け身のイベントしか無かった。
「くそったれがあぁぁぁぁぁ! 俺はこんなしょうもない人生で終わってられっかぁぁぁあぁ!」
どこにもぶつけられない悔しさと後悔を叫ぶ。
すると俺の目の前に、月を背景にTの字で嘲笑した顔をした若いイケメンが現れる。
「——だよね! こんな人生で終われないよね!」
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