第37話

 ふわふわと、宙を漂っている。

 上も下も、右も左も無い。くるくると回っている。

 星が回って、キラキラと輝いている。

 私はぽつんと浮かんでいた。

 どこまでも広くて、限りが無くて、きらきらと輝く、とても怖いところ。

私以外、誰もいない。

 ぬばたま。

 静寂。

 どこに向かっているのだろうか。

 一人。

 一人。

 私は独り。

 独り。

 誰も、いないんですか?

 独りは嫌だ。

 だけど、なんだろう。

 あたたかい。

 銀河が渦を巻いている。

 そのまま、くるくると流されるままにされていると、

 闇の中、ひときわ光るモノがあった。

 太陽だろうか。

 いや、太陽にしては小さかった。

 綺麗。

 なんだか、そこを目指したいと思った。

 あそこに行きたかった。

 旦那様だから。

 そうだ、あれは旦那様だ。

 シャーリーは光に飛び込んだ。

 抱きついた。

 いだかれた。

 会いたかったです。

私も連れて行ってください。

 見ると、旦那様は顔を横にふった。

 シャーリーはもう一度老人の胸に顔をうずめて、しばらく宙を漂っていた。

 腕を離して短剣を構えた。

 短剣が老人の胸に突き刺さる。

 老人は優しく微笑んでいた。

 小さな光の粒となって散らばっていった。


 ありがとう。

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