第27話

「はい、もちろん」

 ポンっとくまたにはぬいぐるみの姿に戻った。

「なぜ、戻るのですか?」

「こっちの姿の方が魔力を消費しないからな、じゃあ行くか」

「はい」

 くまたには腕を差し伸べた。

 シャーリーはくまたにの腕を取った。

 二人は黒い球体に向かっていった。


 どこで鳴っているのだろう、色彩豊かなオルゴールの音が響いている。

龍のモチーフの揺り籠が幾重にも重なり、蝶がもりもりと積み重なり、人形の目玉やクレヨン、トランプなどの老人のコレクションだった物が積み重なり道となっていた。

「なんじゃこれ」

「旦那様の、コレクション……」

 動物の剥製が並ぶ道を歩いている。

「こんな物、集めてたのか」

「はい」

「すっげえ。生きてるみてえ」

 と、くまたにがライオンの剥製を見ていると、ライオンの目がギョロリとくまたにを見た。

「ん?」

 唸り声。

 くまたには後ろに下がった。

「こいつ生きてるぞ!」

「ええ!?」

 二人は急いで逃げだした。

 ライオンは二人を追いかける。

「わあああああ!」

「いやああああ!」

 剥製の間を通り抜け、物陰に隠れた。

「グルルル」

 ゆっくりとライオンは周りを嗅ぎ回った。

 二人はライオンがよそ見をしている間に、そそくさと逃げた。

 シャーリーがつまずく。

「わあ!」

 ゴテン!

 ライオンに見つかった。

「やばい、走れ!」

 獣の咆哮。

 走る、走る、走る。

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