第26話

 自分を抱きかかえている人物を見ると、熊谷だった。

熊谷は道化師に目を見張っている。

「逃げるぞ!」

 二人は部屋から一目散に逃げだした。

 部屋に取り残された者は動こうともしていなかった。

「どうしてここに?」

「心配だったからな、様子を見に来たんだ。本当はもっと早く来たかったんだけど。来方がわからなくて」

 逃げる中、屋敷の廊下が影に飲み込まれていった。

 物が、旦那様のコレクションが闇に沈んでいく。

「お屋敷が」

 すぐ前の床が闇に飲まれる。

「飛べ!」

 二人は飛んで影を踏まないようにした。

 そろそろ出口にたどり着こうというとき、開いていた入り口の扉は影に飲み込まれる寸前で、周りの窓から見えていた光もみるみると小さくなっていく。

「これじゃあ、出られません!」

 熊谷はシャーリーを抱きかかえて、影の隙間めがけて突っ込んだ。

「諦めんなあああああ!」

 入り口は影で埋め尽くされた。

 二人は外に転がり出ていた。

「あたたた」

「痛い」

 二人が立ち上がり、屋敷のあった場所を見ると、黒い大きな球体があった。

「なに、これ」

「さあな、お前が呼んだやつが、なんかしたんだろ」

 シャーリーは震えている手を握った。

「私、戻ります」

「はあ!? 何言ってんだよ、行ってどうにか出来るもんじゃねえだろ」

「儀式に使った短剣があります。それをあれに刺せば、魔法が解けるはずです」

「刺すのも一苦労だぞ」

「私がやったことだから、自分で後始末をつけないと」

 熊谷は頭を掻いた。

「しゃあねえ、俺も行ってやる」

「え……でも」

「とりあえず、頼れる奴に連絡は入れておこう」

 熊谷は、懐から紙とペンをだして、さらさらと書き、飛行機の形に折って飛ばした。

 飛行機は風に乗ってどんどんと飛んでいった。

「私がダメでも、あなたの主人ならどうにかしてくれますね、これで安心です」

「お前がどうにかすんだろ?」

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