第24話

 鏡に映る人形。ボサボサの髪。無表情の顔。

 この前までは幸せそうな顔をしていた。

 だけど今は、そんな欠片はひとかけらも無かった。

 映るドレスは全て灰色。

「幸せに、戻りたい」

 旦那様に会いたい。

 風が吹いた気がした。

 シャーリーは後ろをふり向いた。

 廊下を出てなんとなく、玄関の方に向う。

 すると、玄関の前に一冊の本が置かれていた。

「なに、あれ」

 あんな物はなかった。いつからあそこにあるのか。なんであるのだろうか。

 蘇生の書と書かれてあった。

「そせいの……書?」

 誰かが置いていった?

 いったい誰が。

 玄関を開ける。

 外は激しい吹雪だった。ろくに前が見えない。庭に灰が積もっているように見えた。

 すぐ下を見ると、足跡とローブを引きずった跡がある。誰かが来たのだ。だけど、誰が?

 ドアを閉めて、再び本に目を落とした。

いったい、誰が、なんのために置いていったのだろう。

 拾い上げてじっと、本を見た。

 本をパラパラとめくった。

 めくった。めくった。めくった。めくった。めくった。めくった。めくった。めくった。めくった。めくった。めくった。めくった。めくった。めくった。めくった。めくった。めくった。めくった。めくった。めくった。めくった。めくった。めくった。めくった。

 夢中でペーシをめくった。一心不乱に文字を追いかけた。玄関で時間を忘れて本を読んでいた。もう、暗い。

 もう、文字を追いかけることが出来ないくらい暗かった。

 早く、続きが読みたい。

 いつの間にかシャーリーの瞳に生氣が戻っていた。

談話室に行き、ロウソクに火をつけた。再び本を読みだした。

 これだ、この本に書いてあることを実行したら、旦那様は生き返る。

 シャーリーは確信した。歓喜した。心が打ち震えた。

 気がついたら夜が明けていた。少し休み、起きたら続きを読む。それを何日も繰り返した。理解するのには時間がかかったが、確実に読み進めていった。一字一句読み漏らさないように。

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