第20話

「あなたの主さんに、頼みたいことがあるんです」

「信也に?」

「じつは……」

 シャーリーは老人が亡くなったことをくまたにに話した。

「そんで、頼みたいことってなんだよ」

「旦那様を生き返らせてもらいたいんです」

 沈黙が流れた。

「本氣でいってんのか。それ」

「もちろんです」

「いくらなんでも、それは無理だぞ」

 沈黙。

「でたらめ言わないでください」

「でたらめじゃねえよ」

「嘘だ!」

「嘘なんかつくかよ!」

「あなたの主人は、私の旦那様以上の魔法使いだと聞いています。それなら人を生き返らせることくらい出来るはずです!」

「できねえよ」

「魔法で奇跡を起こせるでしょう」

「魔法は自然の力だ。生きてる物は死ぬ。そんで死んだ物が生き返るのは自然じゃねえ、不自然だ。だからできねえ」

 シャーリーはくまたにを見ていた。

「死者は生き返らねえ」

 シャーリーは色を失った。

「嘘だ」

「魔法なんてそんなもんだ、万能じゃねえぞ」

「魔法は奇跡でしょう? 私たちだって魔法で動いています。違いますか? こんなのは奇跡です。本来動かない物が動いてるんですよ」

 くまたには何も言わなかった。

「人間は死ぬんだよ、受け入れろ」

「嫌だ!」

 膝に置かれたシャーリーの手は、強く震えていた。

 無言で見つめる彼女の瞳。

 断固とした強い信念。

「あなたの主人に会わせてください」

 くまたには息をはいた。

「別にいいけど、回答は俺と同じだぞ」

「そんなのわからない」

「わかるよ」

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