第21話
「わからない!」
カラン、カラン
シャーリーを抱いた熊谷が戸をくぐった。シャーリーを椅子に座らせて、キッチンの方に向かっていった。
「おまえに頼みがあんだとさ」
といいながらキッチンに入っていった。
もじゃもじゃ頭の店主がのれんをくぐって顔をだす。
「いらっしゃい、ココアでいい?」
「すいません。お金を持っていないのです」
「いいよ、氣にしなくて」
ココアの準備がされている間、シャーリーは視線を下に落としていた。
ホットココアがテーブルに置かれる。
「それで話っていうのは」
シャーリーは老人が亡くなったことを信也に伝えた。
「そうか、あの人が……」
「旦那様は困ったらここを訪ねなさいといいました」
「うん、力になれることならなんでもするよ」
「なので……旦那様を生き返らせてください」
シャーリーは真っ直ぐ信也を見ていた。
「それは、できないな」
その言葉を聞いた瞬間、シャーリーの顔から表情が完全に消失した。
「ありがとうございました」
シャーリーは椅子から降りて、玄関へ向かった。
熊谷がキッチンから顔を出す。
「おい、どこ行くんだよ」
シャーリーはふり向いて熊谷を見た。
「ありがとう。屋敷に帰ります」
カラン、カラン
シャーリーは店を後にした。
カウンターの上には手をつけられていないココアがある。
「心配だな」
信也は熊谷にいった。
「……」
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