第19話

の期間は留(とど)まっていてくれる。食べ物もろくに取れずに、その貴重さを強く感じさせてくれる。生き物のあたたかさも、他の季節よりも明確に感じられるのかもしれない。生命をより尊く想える季節だ。雪は言葉に似ている。形の無いモノが形を持って、ゆっくり空から舞い降りて、地面に降り積もって、降り積もったかと思えば、いつのまにか溶けてしまっている。それでもまた、いつの頃か、またやってきて、積もっている。人を喜ばせたり、疎まれたりもする。

 雪。雪。雪。

 チラ

 チラ

 チラ

歩く。歩く。歩く。

 ゴミの山に人形がいた。

 目を引いた。人形はゴミなんかじゃなかったから。

「なんでこんなとこいんだよ」

 傘が降り積もった雪に落ちた。

 青年は人形を抱きかかえた。

 人形の手を握る。

 氷のように冷たかった。

 人形の唇が、動きだした。

「あったかい」

 そんなはずはなかった、俺も人形なんだから。

「温かいわけ、ねえだろ」

「あったかい」消えいるような声だった。

 青年は傘を拾いあげて、雪の降りしきる中、帰っていった。


 シャーリーが目覚めると、ソファに寝かされていた。

 知らない天上。

「ここは……」

「氣がついたか」

 目を遣ると、くまのぬいぐるみがそばにいた。

シャーリーは自分の衣服に目を落とし、髪に手を触れた。

 汚れて濡れた服と髪が綺麗になって乾いていた。服は洗濯してくれたのだろう。

「汚れてたから、わるいけど洗っといた」

「髪も乾かしてくれたんですね」

「ああ」

「へんたい」

「ああ!?」

「いえ、ありがとう……助かりました」

 シャーリーは起き直った。

「あなたに見つけて貰って良かった、あなたのいる喫茶店に行こうとしていましたから」

「店に?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る