第16話

 木の下に小鳥がいた。

 動かなくなっている。

 シャーリーはそれをしゃがんで眺めていた。

 それから、小走りに走っていく。

「旦那様、旦那様」

「なんだいシャーリー」

「鳥の赤ちゃんが動かなくなっていました」

 老人を連れてシャーリーは木の辺りに戻った。「こっちです」

「死んだんだよ」

「死んだ?」

「動かないだろ」

「はい」

「埋めてあげよう」

 木の下に小鳥を埋めてあげた。

 それからしばらくして、シャーリーはなんとなく小鳥が埋められている所を掘り返してみた。

 骨があった。

 小さな、小さな、鳥の骨。

 見ていた。

 人形は骨を見ていた。 

 人形はパチリと目を開けた。横では老人が目をつむっている。

 起きだして、老人にかかっている毛布を直した。

 いつものように、掃除をして、暖炉に火を入れて、料理を作った。

 いつもなら起きだしてくる時間になっても老人は起きだしてこなかった。

「遅いですね」

 冷めてしまうがしょうがないと、食べ物の上にガラスの覆いを置く。

 上着を着て外に出た。雪が降り積もっている。さくさくと足跡を作り、外を散策する。雪だまを木にぶつけて遊んだりした。

 屋内に戻って本を少し読んだ。それでも老人は起きだしてこなかった。

「どうしたんでしょうか」

 人形は寝室に行くことにした。

 螺旋階段を一つ一つのぼり、ドアを開けた。

 揺り籠に近づいて老人をのぞき見る。

「旦那様、起きてください」

 肩を揺する。

「旦那様?」

 なにも反応しなかった。

 頬に触れた。

 冷たい。まるで雪のよう。

 毛布をどけて、ふしくれた手を取ると関節が石のようになって動かなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る