第6話
動けない。このままここにずっといなきゃいけないのかしら?
それは困ります。
「大丈夫かい」
声がした。旦那様の声だ。
老人は本の山を一冊ずつ取り上げて、元の場所に納めていく。
「やっぱり、旦那様ならきてくれると思ってました」
と嬉しそうな声がくぐもって本の山の下から聞こえてくる。
「たまたまだな」
老人は最後の一冊を戻した。
「いえ、旦那様は私のピンチにいつでも駆けつけてくれるんです」
「そんな期待をされても困るんだがな」
シャーリーは老人の話など聞いていないかのように、本棚の上を見上げて周囲をぐるりと歩いていた。
「全然、話を聞いておらんな」
「旦那様、この本たちには何が書かれているのですか?」
「魔法の実験と研究について書かれてるんだよ、長い時間をかけて世界を回ってこの本達を集めたんだ」
「なんのためにですか?」
「道楽だよ」
「道楽ですか?」
「ただ、自分の楽しみのために何かをする。好きなモノをコレクションする。私はそうゆう生き方をしているんだ」
「この本は全て読んだのですか?」
「読んどらん」
「読んでない……」
「べつにな、本は全部読まなくてもいいんだよ、自分の読みたいとこだけを読めればそれでよい、一切読んでない本が本棚にあってもいいし、本棚の本を全部読んでしまったら、楽しみがないじゃないか」
「ふーん、良くわかりません」
シャーリーは本を見上げていった。
本達は瞬いている。
目を開けると朝だった。
隣で老人が寝ている。
龍のモチーフの揺りかごのベッドで二人は揺られていた。
「おはようございます、旦那様」
老人は寝息を立てている。
シャーリーは寝床から抜けだし、めくれ上がった毛布を老人にかけ直した。
揺りかごからトンと降りて、静かに扉を閉めた。
ガガガガガガガガ
「できました!」
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