分岐点



*分岐点



「動くな」

 誰のものかも分からない低い声に、身体が強張ったのが分かった。

 寝起きの身体だったが、一瞬で危機を察知する。

 今は……たぶんループ後の一八日の明け方くらいか。

 まさか強盗かとも思ったが、今までのループで強盗事件があったなんて聞いたことがない。

 つまりそんな突拍子もないことが起こる可能性は低い。

 となると、答えは一つ。

 バレたんだ。

 この世界を作ったこと。

 だからそれを尋問しに来た……ってところだろう。

 謎の転校生が来た辺りからそんな予感はしていたけれど、思ったより時間がかかった。

 上手に演技できていたってことなのかな。

 相手はベッドの上で、布団の上から体重を掛けている。

 体重が重いだけなのか、それともちゃんとした技術の上で拘束されているのかは分からない。

 ベッドに横になった体制から起き上がることどころか、身体を動かすことすらできなかった。

 布団の上から乗られるのってこんなに苦しいんだ。

「…………」

 ダメだ、読めない。

 今までこんなにも読めないこと、無かったのにな。

 いいような悪いような、なんだか変な感じだ。

 こんな人達ばかりなら、どんなにラクだっただろう。

「あまり手荒なことはしないでくれるかい?」

 静かな足音と一緒に、知っている声が増えた。

 ああ、やっぱり正解だった。

 こんな状況じゃとても安心できないけれど。

「カレと、話がしたい」

 その言葉で、かかっていた体重からようやく開放された。

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