第9話 真相

 藤堂が国見兼を殺した動機は、彼の過去に深く根ざしていた。国見は藤堂の昇進を妨げ、常に自分の立場を脅かす存在だった。藤堂は、国見が自身の努力を台無しにすることで、彼のキャリアや理想を踏みにじると感じていた。


 また、国見が関与していたある事件の真相を隠蔽しようとしていることに藤堂は気づき、彼の行動がさらに危険な結果を招く可能性があると判断した。藤堂は、自分の目指す真実を追求するためには、国見を排除する必要があると考えたのだ。


 その結果、藤堂は一時的な感情に流され、国見を殺すという決断を下してしまった。彼は理想と現実の狭間で揺れ動きながら、最終的には自らの欲望と恐れに屈してしまったのである。


 藤堂が国見殺しに使ったトリックは、主に「偽装」に関わるものであった。彼は、窓を外部から破ったかのように見せかけることで、外部からの侵入者を装った。また、手紙を残すことで他の人々の注意を逸らし、混乱を生じさせた。


 さらに、音の利用も重要な要素だった。ガラスが割れる音を利用して、周囲の人々を集めることで自分の行動を隠す狙いがあった。これにより、藤堂は犯行後にすぐに逃げることができ、現場からの立ち去りを容易にしたのだ。


 加山と宇崎を殺した犯人は藤堂ではない。

 宇崎を殺したのは加山だった。

 加山が宇崎を殺した動機は、過去の因縁に深く根ざしていた。宇崎は加山の信頼を裏切り、重要なプロジェクトを sabotagedした過去があった。加山はそのせいでキャリアを大きく損なわれ、恥をかかされていた。


 また、宇崎は加山の家族に対しても危害を加える発言をしており、彼の心の中に復讐の念が芽生えていた。加山は、宇崎の存在が自分の人生に与えた影響を許せず、最終的に彼を排除することでしか解決できないと判断したのだ。


 感情が高ぶる中で、加山は冷静さを失い、宇崎を殺すという決断を下した。この行動は、加山にとって過去の苦しみを断ち切るための一種の解放でもあったが、その結果、自らの人生も大きく狂わせることとなった。


 京介は旅行中、撮影のために持参した薬を誤って過剰に摂取してしまった。その影響で意識を失い、周囲の人々に発見されたときには、彼は命を落としていた。しかし、運命のいたずらか、奇跡的に彼は蘇る。


 発見された際、彼のカメラにはその瞬間の写真が残されており、周囲の状況や彼が摂取した薬の影響を示す貴重な記録となっていた。写真には、彼が最後に見た景色や、意識が朦朧としていく中での表情が映し出されていた。


 蘇った京介は、過去の自分と決別し、新たな目的を持つことを決意する。「宇崎を殺す」霊安室代わりのワインセラーで決意した。

 

 翌朝、京介と葛城は、ロケット発射台が見える断崖絶壁で対峙していた。緊迫した雰囲気の中、京介は冷静さを保ちながらも、葛城の動きを警戒していた。


「お前のやり方には限界がある」と京介が言い放つ。葛城はその言葉に挑戦的に笑った。「お前が何を考えているかは、もうお見通しだ」


 二人の間に張り詰めた緊張が流れる中、葛城が一気に攻撃を仕掛けた。京介は素早くかわし、反撃を試みる。しかし、葛城の動きは鋭く、彼の攻撃は次々と京介を追い詰めていく。


 崖の端で、京介は自らの力を振り絞り、葛城に向かって突進した。しかし、葛城はその動きを予測し、冷静に京介をかわして一発の強烈なパンチを放った。その瞬間、京介はバランスを崩し、断崖の縁へと向かってしまった。


 京介は必死に足を踏ん張るが、葛城の一撃が彼の体を押しやり、京介はついに崖下へと転落していった。葛城は冷酷な視線を向け、京介が消えていくのを見届けた。


「これで終わりだ、京介」葛城は静かに呟き、再びロケット発射台の方へ目を向けた。彼の心には、勝利の余韻が広がっていた。

 

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デスペレート・シチュエーション③ 串間市殺人事件 鷹山トシキ @1982

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