第8話 ガリとデブ

 ~現在~


「魔王軍退治後、オンバ・リーズフィムは人見の力によって王位継承権が変わ

 り現国王・・・人見優輝になりました」

「えっちょっとまってくれ、今の話を聞いてる限り性格はキモイがそんな悪い

 人に俺は聞こえなかったんだが」


 力があり、性格がキモイが仕事の依頼の件ではしっかりと働いてくれる。

 そんな人が力で王位をもぎ取るようにリアンは感じなかった。


「えぇ、最初は感じのいいイケメンだったさ、

 しかし結局は人間、人は力を手にすると性格や何から変わってしまうんです」

 

 食堂は無言に包まれ、気まずい空間になった。

 しかしリアンは腹が減っていた為ご飯を食べる。

 静音の中みそ汁をすする音が響いた。

 

 そこから特にハングリーの従業員と話はなく、ご飯を食べきりお会計をしようとしていた。

 そう、お会計だ。

 突然だが問題です。

 いきなり異世界に飛ばされた俺はお財布があるでしょうか?

 シンキングタイムーーーーーーー!



 正解は無いに決まってるだろ!

 忘れてたわ!

 昨日めっちゃ牛と豚見て、めっちゃ歩いて色んな事考えてたら金の事すっかり忘れてたぜキャピ!

 

「すいません、お金持ってないです」


 怒られると思っていたリアン、しかし従業員から言われた言葉は―――


「いいですよ、お客さんここらの人ではないでしょう、

 そんな方がこんなちんけな場所に来てくだっさって胸がいっぱいです」

「えっ…いいんですか?」

「えぇ、またのご来店をお待ちしております」


 ハングリーの従業員の皆がリアンに頭を下げてくれた。

 その接客対応の姿にリアンは感動した。

 お店の外観から見ても決してお金に余裕がある訳でも無いのに、お金がない自分に対してこれ程までに優しい対応をしてくれてる。

 リアンは頭を深々と下げお店を出た。


(こんな優しい人がいる国でなんで優しい人が苦しまなくっちゃいけないん

 だよ…………ふざけるなよ、体がやせ細った人が頑張ってるのに評価されな

 いなんておかしいだろ)


 そしてリアンは城を睨む。

 正確には城にいるであろう現国王人見優輝に向けたものだった。


「待ってろよ人見!今からお前にインバーターの仕事見せてやるよ」



 ♢


 リアンは城門の目の前にいた。

 

「よし行くか」


 門番や兵士など城を守る人はいないどころか男がいなかった、いるのはメイドの可愛い人だけだった。

 その為、特に城の人に邪魔されることはなくすぐに人見がいる部屋の前に着いた。

 

「な、なんかあっという間に着いちゃったな…

 ちょっと俺と門番とかの兵士と戦って俺がボコボコにしちゃって?その姿を

 見た女が俺に群がると思ったんだけどな~」


 まぁそんな変な妄想は現実に起きる事も無く人見がいる部屋に入っていた。

  


—ドーン!


 部屋に入ると玉座に男が座っていた。

 恐らくその男が人見であるはずだが……聞いていた話と少しばかり違った。

 聞いていた話だと年齢は20歳と言っていたからそれから3年経っている事から23歳、身長は高く180cmを超えの爽やか細マッチョ、イケメンマッシュと聞いていたはずなのだが・・・


 玉座に座ってる男は23歳と思えない程に肌が荒れ、とても太っておりカビ〇ンみたいな見た目で髪もギトギトで油ぽかった。

 とてもではないが聞いていた人物と似ても似つかない。

 リアンは別室に入ったと思い部屋をこっそり出ようとした時だった。


「誰だ?俺様の部屋に入って来た野郎は」

「あっすまない、部屋間違えちゃったみたいで」

「間違ってないぞ、お前が探している部屋はここだ」

「えっ?」


 どうゆう事だろう?

 なんでこの部屋と分かるんだ?

 ・・・もしかしてこのデブでギトギトの男が人見なのか?

 いーやそんな事はないな、たかが3年でこんなに変わるはずがない

 ないよな……で、でも聞いてた通り俺様気質のタイプだもんな

 ちょ、ちょっと聞いてみるか


「もしかして、おま…いや貴方は人見優輝様でしょうか?」


 王座に座るくらいの人だ、人見ではないかもしれないが丁寧に話をした。


「あぁ、いかにも俺様が人見優輝だ」


 どうやら予想は合っていた。 

 このデブギト野郎が人見のようだ。

 

「俺様は名乗ったんだ、お前の名前を聞かせろ」

「俺はリアン・ロヴァイル、インバーターの職員でお前を正に来た」


 インバーターと聞きき、眉をしかめた。

 

「なんでインバーターやつがこの世界に来た」


 なんでって言われても…どっかの誰かさんに連れて行かされたからな

 とっさに「正に来た」ってカッコよく言っちゃったし俺どうしよ・・・

 

 人見の質問に答えを悩ませてる時コールマークが表示された。



—―プルプルプルプル


 電話先 アドケル


 

(アドケルから電話?なんか嫌な予感がするけどーー)


 気が進まなかったが、無視する訳にもいかなく電話に出た。

 

「もしもし……」

「ハーヒャヒャヒャヒャ!今回のターゲットの所まで着いたな」

「えっ!なんで分かるんですか?」 

「あー言ってなかったか、お前、性格にはこっちの部屋で寝ているお前が着け

 ているヘルムギアから今私が見ているパソコンに情報が取り込まれお前の5

 感や体温から全て分かるのだ」


 えっそれじゃぁ俺のあんなとこやこんな事まで見られてたのか。

 恥ずかしいぃ―


「リアン俺から直接その人見って奴に話がしたい。 

 スピーカにしろあいつに聞こえるように」

「ん?分かった」


 コールマークの横に付属してスピーカを集中して見るとアドケルの声が

響くようになった。

 

「あっあーー聞こえるか人見優輝」

「聞こえてるぞ、何か用か?」

「お前の事をちょっと調べさせてもらったんだが、だいぶふざけた事をしてた

 な」


 アドケルの声にやや怒りを感じた。

 いつもイラつく笑い方をしていたあのアドケルがだ。

 

 アドケルがこんな風になるなんてこの3年の間に何があったんだ…………

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