第18話 自爆装置起動

 レオンが拘禁室に囚われてから10時間後、最後の1人の説得が終わった。ガブリエルはナカジマに与えられた猶予時間をぎりぎりまで使い切ったのだ。結局、ガブリエルの説得に応じず拘禁室に連行されたのはルシアだけだった。ガブリエルを含む6人は冷凍睡眠プロジェクトへの参加を渋々ながら認めた。

<副長、ご苦労だった。2人の脱落者がでたことは残念だが、6人という貴重な人材が残ったので、航海は予定通り進められることだろう。ところで、冷凍睡眠の順番だが、これで良いかな? コンソールで確かめてみて欲しい>

「了解。今見てみる」

 ガブリエルは促されるまま、コンソールの画面を確認した。

「驚いた…。自分の考えたプランと全く同じだ」

<クルーの専門能力、性格、人間関係の相性を総合的に判断して、このスケジュールを組んでみた>

 5年以上も生活を共にしてきた自分と同じ判断を、ナカジマがこの短時間に下せたことにガブリエルは少なからず感心した。

「問題はありません。これでよろしいかと思います」

<それでは準備が整い次第、プロジェクトをスタートさせよう。ドクターに準備するよう伝えて…>


「ちょっと待ってください」

 ガブリエルがナカジマの言葉を遮った。

<何だ、まだ何か問題があるのか>

 ガブリエルは懇願する口調で語りだした。

「このスケジュールだと、最初の睡眠クルーが目覚めるのは20年後になります。その頃には目覚めているクルーの間に子どもが誕生しているだろうし、いろいろなことが変わっているでしょう。ということは現在のクルーで過ごせるのは本当に今が最後になってしまいます。全員で最後の晩餐をさせてもらえないだろうか」

 ナカジマは少し時間を置いて返答した。

<人間らしい感傷だな。でも、理解はできる。私もかつては人間だったからな>

 ナカジマは言った。AIにそのようなプログラムがあるのかどうか分からなかったが、口調は先ほどレオン船長と遣り取りしていた頃とは一変し、とてもリラックスしたようにガブリエルは感じた。

<いいだろう。最後にみんなでディナーを楽しむと良い。自分も参加できると良かったのだがな…。だが、レオン元船長とルシアの参加は認めないぞ>

「承知した。ありがとう、礼を言うよ」

 ガブリエルは静かに言った。


 最後の晩餐の会場は温室兼食堂だ。6人が一度に入れるほど広くはないのだが、このときにばかりは全員が集まらなければ意味はない。ハルとアリソンは壁際で立ったままだったが、狙い通りレオンとルシアを除く全クルーが集まった。皆一様に神妙な表情をしている。

「みんな…」

 ガブリエルが口を開いた。

「説得に応じてもらい感謝する」

 そう言った瞬間、船内にけたたましい警報音が鳴った。集まっていたクルーの表情は一瞬で凍り付いた。

<自爆装置が起動しました。本船は180秒後に自爆します。乗船者は速やかに退船してください>

 椅子に座っていたクルーが立ち上がった。

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