第75話 王子の名のもとに
ミラが入った部屋は、
「……宝物庫……?」やたらと光り輝いている宝石やら高そうな絵画やら……そんなものが多数ある部屋だった。「……こんなところに地下牢への入口があるのか?」
アレスとしては居心地の悪い空間だ。高級品というのはちょっと触っただけで壊れてしまいそうな儚さがあるから、アレスからすればとっつきづらい。
「少々お待ちを」ミラはとある宝箱を開けて、「この宝箱のそこにパズルがあります。そのパズルは王族にしか解けません」
「そうなのか?」
「ニーニャさんでも無理でしたよ」じゃあアレスではムリだな。「ちょっと仕掛けが特殊でしてね。教えるわけには行きませんが……」
ミラはしばらくパズルとやらを操作していたが……
「おや……」首を傾げて、「……変わってますね……僕の知っている解法では開かないようになってます」
「……そりゃそうだろうな……」もうミラは王族じゃないのだから。「じゃあ……どうする?」
「ふむ……国王様を誘拐してくるか、あるいは……弱そうなところから狙いましょうか」
そんな相手……1人しかいねぇよな……
さて、そいつを探し始めようと思っていると、
「見つけたぞ……!」宝物庫の扉が開け放たれて、「王宮の侵入者め……! この僕が王子の名のもとにひっ捕らえてやろう!」
そういって元気よく登場したのは……
「おやサフィールさん……良いところに」
サフィールであった。どこぞの貴族様で……今のカイ王子だ。
一応サフィールは昔のカイ王子に寄せたファッションと髪型になっていた。なかなかの美少年だが、やはりミラには及ばない。
「な……」サフィールは本名を呼ばれたことに驚いて、「な、なにを言っている……? 僕は……」
「ああ……これは失礼しました、カイ王子」今のカイ王子はサフィールである。「ちょっとご相談が――」
「ええい、うるさい!」うるさいのはそっちだ。「逆賊を捕らえよ! これは王子の命令だ!」
その命令を受けて、大量の聖騎士たちが部屋になだれ込んできた。
ついでに高級そうなお宝たちがガラガラと音を立てて崩れていった。いくつかのダイヤや絵画が踏み潰されて、かなり悲惨な有り様になってしまった。
「おいおい……高そうなお宝が粉々になってるけど、いいのか?」
「問題ありませんよ。本当に重要なお宝は、別の場所に保管してますから」ここはフェイクなわけだ。「ともあれ……カイ王子とお話するには、この聖騎士さんたちを黙らせないといけないようです」
今度は50人くらいか。人数は少ないが、部屋が狭い。それに個人の実力は今回のほうが高そうだ。
さてさっさとぶちのめそうとアレスが思っていると、ミラが言った。
「カイ王子へ。相手の力量の推定を間違えると、大切な兵力を不要に失うことになりますよ。あなたはもっとしっかりと……自分自身の能力を向上させるべきです」
自分自身が強くないと、相手の強さは見極められない。だからミラは鍛えているのだろう。
「侵入者が偉そうに……!」どうやらサフィールは……目の前の相手が本物のカイ王子だとは気づいていないようだった。「早く捕らえろ!」
やれやれ……せっかくミラが警告してくれたというのに。
ともあれ第二戦は50人の聖騎士である。人数はさっきより減ったが、実力者揃いであろう部隊。
これで指揮官が優秀だったらな。
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