第59話 まずは脱臭から始めましょう
二次試験は1対1での実践形式だった。何人かと連続で戦わされて、そこでも勝敗をつけた。
アレスとミラは問題なく二次試験も合格。2人が直接対決しなかったのは偶然か、それとも騎士団長のはからいか……どちらだろう。
「合格者は6人」サヴォン団長が合格者の前に立って、「まずはお疲れ様。キミたちはこれで晴れて騎士団の一員だ。それぞれが誇りと礼節を保って行動するように」
誇りと礼節か……苦手だな。
アレスがミラに小声で、
「こんなに少なくて大丈夫なのか?」
1年に1回しか入団試験はない。それなのに6人しか残らないとは……しかもそのうち2人はアレスとミラだ。その日のうちにいなくなる。
「あくまでも一般の入団試験が1年に1回なんですよ。ほかは推薦とかスカウトとか、むしろそっちから入団する人も多いんです」
なるほど……そんなものか。まぁ得体のしれない一般人など、あまり王宮に入れたくないもかもしれない。
サヴォン団長が言う。
「これからキミたちには軽く礼儀作法を学んでもらう。そしてその身につけた礼儀作法で国王様に挨拶をしてもらう。あまり無礼を働くとクビになるので注意すること」
一応最後の試験なわけだ。
「アレスさん、礼儀作法の類はどうですか?」
「テーブルクロス引きならできる」
「今度は僕がフォローすることになりますね」そうしてくれるとありがたい。「ちなみに酔っ払った貴族に一発芸を要求されることもありますから。テーブルクロス引きができるのは素晴らしいですよ」
そんな面倒くさい貴族がいるのか……やっぱり聖騎士などアレスに務まるものじゃない。
サヴォンが軽く咳払いをする。静かにしろ、ということだろうから居住まいを正す。
「さて礼儀作法に関しては、うちのメイド長に一任してある。私は他の任務があるから顔は出せないが……彼女の言う事をよく聞いて精進するように」
なんだ礼儀作法もサヴォン団長に教わるわけじゃないのか。行儀よくイスにチョコンと座っているサヴォンを見るのも面白そうだったが、まぁ仕方がない。
さてサヴォン団長が部屋を出ていって、古風なメイド服を着た女性が入ってきた。どこぞのメイドカフェのメイドと違って、落ち着いた雰囲気のメイド服だった。
この人に礼儀作法を教わるのか……相性の良い人だといいな、なんて思っていると、
「下民の匂いがしますね」第一声がそれかよ。「その臭い匂い……まずは脱臭から始めましょう。あなたたちの腐った人生を包み隠す方法をお教えしましょう」
……
この礼儀作法の勉強会の間……ブチギレずにいられるだろうか。
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