ドラゴン

第47話 ピクニック

 さてテルのバイトが終了する時間までメイドカフェでくつろいでから、


「世話になった。ありがとう」アレスは礼を言って、ミラを担ぎ上げた。「……グッスリ寝てんなぁ……」


 アレスの背中からスースーと規則的な寝息が聞こえてきている。その寝息はかなり安定していて、深い眠りに落ちていることが伝わってきた。


「疲れてたんだろうね」いつもの服装に戻ったテルが、「グッスリ眠れたなら、良かったよ」

「……テルは大丈夫か?」

「大丈夫だよ。なんせ人間じゃないんで」……一応とはいえ隠してるんだろうが……「人間の尺度では測れない部分も、山ほどあるんだよ」

「……そうか……」


 もう隠すつもりがないだろう。完全にバラしているだろう。答え言ってるだろう。


 ……まぁこちらから答えを出すのは野暮だろうから、聞かなかったことにしておこう。


 というわけで……その日はグッスリ眠った。ここまで深く眠ったのは久しぶりのことだった。



 ☆



 それから数日が経過して、


「じゃあ……そろそろドラゴン討伐に行くか」ちょっとのんびりしすぎてしまった。「俺とテルは行くけど……ミラはどうする?」

「僕も行きます」なんか気合いが入っているようだった。「この間……メイドカフェで寝落ちしたときのお詫びが済んでませんので」

「……気にしなくていいってのに……」


 寝落ちした翌日、ミラは誠心誠意謝ってきた。メイドカフェから家まで送ってもらったこと、夜ふかしすると言っていたのに寝てしまったこと。それらを謝罪された。


 しかしそんなこと謝るほどのことでもない。というか途中で寝るだろうと思ってメイドカフェに連れて行ったのだ。


 それでもミラは埋め合わせがしたいらしく、


「活躍の場をください。自分の失態は……自分で取り返します」熱血すぎる……武士か? 「そもそも今回のドラゴン討伐は……僕が父上にもう一度会いたいというわがままを言ったから生じた依頼です。僕がやるのが責任というもの」


 ……思ってたが……ミラってかなり熱血だよな……クソ真面目というか融通が利かないというか頑固というか……

 

 ミラはさらに続ける。


「ですが僕だけでは実力不足なのは事実……ですから……手伝っていただけますと幸いです」

「手伝うも何も……俺が引き受けた依頼だし」勝手に話を進めたのはアレスだ。「それに……ちょっと気になることもあるからな」

「……?」

「いや……なんでもない」


 果たしてドラゴンが国王によって生み出された存在なのか。それを確かめないといけないのだ。


 さらにサヴォン団長にリベンジするなら、ドラゴン程度は討伐しなければならない。かつてサヴォン団長が獣人を討伐したように。


「私もやるよ。暇だし……そんなに暇か……? 「というかドラゴンさんってどこにいるの? たまに街に降りてきてるのは知ってるけど……」

「近くの山に住み着いてるって、ニーニャが言ってたけどな……」

「じゃあピクニックだね」


 ドラゴン討伐ピクニック


 ……この激辛仮面……ドラゴン討伐をちょっとしたイベント程度にしか考えてないな。なんとも頼りになるやつだ。


「さて……じゃあ3人で――」アレスがドラゴンのいる山に出発しようとすると、「……おやおや……向こうから出向いてくれるとはね」

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