第40話 夜ふかしというものに
さてミラ作のオムライスを頂いて、少しの腹休め。
「料理……上手だね」テルが素直に言う。「プロにも引けを取らないかも……」
テルの言う通り、ミラの料理は抜群に美味かった。そこらへんの飲食店でも、これほどの料理はお目にかかれないだろう。
「ありがとうございます」礼がいちいち深いな……「料理はできて損がないから……そう父に教えられていましたから。修行してたんです」
なるほど……しかも動きを見る限り、後片付け等も仕込まれているらしい。なんとも優秀な親子だ。
さて食事を終えて、
「ではアレスさん……よろしくお願いいたします」
「了解」アレスは立ち上がって、「近くに空き地があるから……そこでやるか」
2人の会話にテルが割って入る。
「私も行く。暇だし」
「……お前、今日バイトじゃねぇの? 夜からだろ?」
「バイトの時間までってこと」
バイトの前にちょっとした戦闘訓練に参加するのか……相変わらず体力おばけだな。
というわけで3人で空き地に移動。その最中、
「……夜の街って……こんなに肌寒いんですね……」ミラが体をさすって、「初めて知りました」
「……王子様となれば、夜中に出歩くこともないか……」そんなことは危険だ。といっても……「まだ……そんな夜中でもないけどな……」
夕食を食べて少し時間が経過したくらいである。
「え……? そうなんですか?」
「……いや、なんでもない」元王族と掃き溜めの街で育った青年。時間の感覚は大きく異なるだろう。「……俺は夜ふかししてしまうタイプだからな……ミラみたいに規則正しい生活がしたいんだが……」
ミラはずっと早寝早起きを徹底している。もはやクセみたいになっているのだろう。まだ3日くらいしか一緒に暮らしていないが、育ちの良さが伝わってくる。
「僕は逆に……夜ふかしというものに憧れています」憧れるようなものじゃないが。「時間を気にせず、友と一緒に大騒ぎ……そんなことを夢に見ていました」
……友……
それはきっと王子という立場上、手に入れづらいものだったのだろう。仮に手に入れても立場という事柄が重くのしかかってくる。
立場も時間も気にせず遊ぶ。アレスにとっては当たり前に手に入れられるものだが、ミラにとっては高嶺の花だった。
とはいえ夜ふかしなんて体に悪いし、推奨するものでもない。眠れるものなら規則正しく眠ったほうが良い。
そんな事を考えながら、空き地に到着。
「さて……」アレスは軽く準備体操をして、「じゃあ……はじめるか」
ミラとの戦闘訓練である。
最近はアレスも体がなまっていたので、こうやって鍛えなおす機会が必要だったのかもしれない。
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