第12話 ボディガード
掃き溜めの街の店に突然現れた国の王子様。さすがのお客さんたちも驚いているようで、少しばかり挙動不審になっていた。
改めて王子を見てみると、本当に美少年だった。男性としては少し背は低めだが、スラッとした手足と柔らかそうな金髪がよく似合っていた。
カイ王子は運ばれてきたパフェに口をつけて、
「あ、美味しい……」感嘆の声を漏らした。「これは……このお店に来る人の気持がわかりますね」
「まぁ……そうだな」
この店の料理はうまい。それはそうなのだけれど……
要件が気になる。いくらなんだって国の王子様がわざわざパフェだけ食べに来ることはないだろう。
とはいえ簡単に切り出せる話題じゃないのかもしれないので様子を見る。
そんなときに会話をしてくれるのがテルである。
「このお店の料理、美味しいよね。私もお気に入りなんだ」
「そうですね……他の料理も食べてみたいです」カイ王子はテルを見つめて、「テルさん、ですね」
「あれ……どこかで会ったことがある?」
「いえ……ですがお噂はかねがね」
どんな噂なのだろう。激辛大好きな味覚の狂った女かな。
テルは自分に対する評判など興味がないらしく、他のことを聞いた。
「後ろの2人は護衛の人?」
「はい。僕は比較的、狙われやすい立場にいますからね」そりゃ王子は狙われやすいだろうな。「この2人がいるなら安心です」
「へぇ……私たちが王子を狙ったとしても?」
テルが言うと、護衛の2人が明らかに警戒心を強めた。
それを見てテルが両手を上げて、
「あ、ごめん。興味本位で聞いただけだから、気にしないで」空気が読めないのはテルの悪いところであり、良いところでもある。「狙ったりはしないよ。安心して」
「……ありがとうございます」カイ王子は頭を下げてから、護衛の2人に聞いた。「ちなみに……戦ったら勝てますか?」
カイ王子もまた興味本位で聞いたようだった。
護衛2人とアレスとテルのコンビ。果たして戦えばどうなるのか。
護衛の1人が無表情のまま、
「無理でしょう」即答した。「無冠の帝王の噂はよく聞きますからね。もしも勝とうとするなら、騎士団長に応援を願います」
「なるほど……」カイ王子が頷いて、「騎士団長レベルなのですね。それは相当な手練れのようです」
まったく聞いていられない会話だ。
「過大評価だ」
「そうでしょうか? 実際に国の聖騎士を無傷で倒していらっしゃいますが」
「……言っちゃ悪いが、そんなに強くなかったぞ。態度も含めて……聖騎士ってのは質が落ちてるんじゃないか?」
アレスが言うと、
「……そうですね……それは否定できないでしょう」なんか真剣な会話になってしまった。「……聖騎士の規模が大きくなった結果、管理しきれていないというのが現状です」
「解決策は?」
「……ハッキリ言うと、ありません」なかなか大変みたいだな。「……不甲斐ない限りです……申し訳ない」
「アンタのせいじゃないと思うが……」少しは責任はあるのだろうが。「まぁ……暗い話はなしにしよう」
アレスとしては話がそれたら良いのだ。というより無冠の帝王という名称が聞きたくない。
さて……世間話はこれくらいにするか。
「そろそろ本題に入ろうか」暇だから世間話を続けても良いけれど。「俺を探してるって言うが……なんの用なんだ?」
「はい。単刀直入に申し上げます」カイ王子は深々と頭を下げて、「僕のボディガードになってほしいのです」
……
なんで?
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