第2話 2人の姿がよく見えるようになった。 後編
そう思っていたのもつかの間、大人が扉を開けた。
何か起きるんじゃないかと思って少し身構えていたけど、何も起きなかった。
広い。真ん中にテーブルがある。その周りには一辺ずつ2つ座布団が置いてある。
あとは、年季が入ったソファーにテレビ…。きっと居間だ。
「どうぞ座って。楽な体制でいいよ。」
大人は重から見て一番奥の座布団に座った。
重は、大人と向き合う形で一番近くの左の座布団にお姉さんずわりで座った。
子供のほうは大人の隣に座ると、テーブルの上にあった本を
テーブルの下へとどかした。自分が来るまで、読んでいたんだろう。
重が考えていると、大人が話し始めた。
「あ、今更だけど、いきなり連れてきちゃってごめん。」
いきなりの謝罪に焦って、
「えっ、あ、い。」
と
「入り口の、あの四角の模様の扉で来たわよね。」
重が戸惑いながらもうなずくと、大人は重を安心させるように笑った。
「そっか。良かった。」
疑問に思うところがありながらも大人の話を聞いた。
「ここ、あたしたちの家じゃないんだ。あたしたちも、あの扉で来たの。
この家が誰のなのか、あたし達も分かんない。」
重は驚いて、食い気味に言った。
「えっ、それじゃぁどうして――。」
大人は力の抜けた笑みを浮かべながら
「でも、あたしたちがここに居てもいいってことは分かってるから。
この家にあった書庫の本でね。
この家、魔法の力みたいなやつ?で守られてるらしい。
本を探せばこの家の持ち主が分かるかもしれない。
ま、めんどくてやってないけど。はは。」
と笑った。この大人は、気の抜けた感じのヤツなのか、と重は思った。
「てことで、君がここに入ったことに関しては、怒らないから。」
大人が一息ついたところで、重は子供のほうを見た。
子供はいつの間にか、本を読んでいた。
笑っている。重は知らない本だ。面白いんだろうか。
「そういや、名前は?」
「かさね…
重は名前を名乗った途端、息をのんだ。
しまった。下の名前を言ってからフルネーム言うと、
かっこいい感じになっちゃうんだった…。
重のそんな思考を遮るように大人は
「重っていうんだ。さんとちゃんとくん、どれで呼んでほしい?」
と言った。
「…さん以外なら、どれでも…。」
「じゃ、重。突然だけど、あの扉、特定の人にしか見えないらしいのよ。」
大人はそこまで言って、少し考えるそぶりを見せた。
自分があの扉で来たことがよかったのは、この家の持ち主かもと思っていたからか。
と重は思った。
「ま、縁ってことだから、よろしく。せっかく知り合えたんだし、いつでも来な。」
頼りがいのある笑顔でそう言われた。
「…ありがとうございます。」
疑う気持ちは流石にあるけど、この大人のことは気に入った。
仲良くするのもいいかもしれない。
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