第2話 2人の姿がよく見えるようになった。 前編

ばれた。

不運なことに、重がかばんを置いたのは廊下の扉の前だったので、

ヒトの真正面に立つことになってしまった。

気まずくて顔を上げることができない。

今外の扉から出ていくのは、流石にできない。


重はばつの悪そうにかばんをを持って固まっている。

よっぽど驚いたのか、ヒトも動かない。

このままじゃいけないと思っておそるおそる顔を上げると、

目の前にいるヒトは子供だと分かった。同い年くらいだろうか。

学校に行かなくていのだろうか。


子供は、少し開けた扉からこちらを見ている。

扉の奥が見えたけれど、やっぱり廊下だった。


今度は目が合ったまま固まってしまって、また気まずくなった。

これからどうしようかと固まったまま考えると、

突然子供がドン、と足を鳴らした。


重が警戒なのか何なのかわからず混乱していると、廊下の方でドアの開く音がした。そのあと、

「アユ~?どうしたの。」

と、ヒトの声がした。多分、大人の声。

このヒトがなんだろうか。

というかもう一人、ヒトがいたのか。

重はそう思いながらも目の前のヒトを見ていた。


子供は、重を警戒するようにじっと見て、それから振り返った。

しばらくして奥のヒトは

「誰か来たの?」

と言った。

奥のヒトは子供とは違ってあまり警戒心はないようだ。

小走りでとたとた近づいてきた。


子供の後ろまで近づくと、子供が扉の後ろの見えない方によけて、

奥のヒトが少し開いていた扉を完全に開けた。


2人の姿がよく見えるようになった。

子供の方は自分と同じくらいの身長で、銀色の髪。

ちょっと黄色っぽいところがあるかも。

パーカーを着ている。

顔は、可もなく不可もなく、という感じだ。強いて言えば、鼻がきれい…かも。


隣の大人の方は、やっぱり大人なだけあって身長が高い。

多分大人でも大きい方だろう。4~5cmくらい。

カジュアルな服を着ている。

一番の特徴は髪。若干透き通ってて、

マグロ(マグロのおすしと言われて思い浮かべるやつ)の様な色をしている。

顔も髪も似ても似つかない二人だから、きっと親子ではない。


重が二人のことをじっと見ていると、

大人と子供が重の様子をうかがいながらこそこそと話し出した。聞こえない。

聞き取ろうとしている素振そぶりがばれないようにしていると突然話が終わったようで、

「着いてきて。」

とだけ言った。冷たい声ではなかったけど、

やっぱり無断で侵入したことについていろいろやるんだろうか。

今更ここを出ていくのは無理そうだし…。重はそう思って、

おとなしくついていくことにした。


廊下を少し歩くと、木とガラスの扉の前で止まった。

扉にでっかく分数を書いたら、分子と分母の部分が正四角形になって、

その正四角形が半透明のガラス、みたいな…(伝わった?)。


廊下に繋がる扉の真ん中が白の半透明だとしたら、

こっちの上と下の半透明は透明に近くて、波打っている。

つまり、あっちがすりガラスでこっちがかたガラス、ということだ。


重がそう思っていたのもつかの間、大人が扉を開けた。







◆読んでくれてありがとうございます。2号です。◆


2話が結構長めになったので、前編と後編に分けました。


投稿の頻度は決まっていません。

気に入ったら、何かしら評価してほしいです。

アドバイスや誤字報告、待ってます。

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