第22話 夜勤
ケアハウスの夜は、七時以降に看護師が居なくなり、夜勤の介護職員二人だけになる。その時間には夕食の片付けも終わり、皆、部屋で寝ている。
時間を決めて、部屋を回って、おむつ交換を行う。十時頃と、朝の四時頃。五時頃から起こし始めないと、七時からの朝食に間に合わない。その間の十一時からと一時から、夜勤者は交代で二時間ずつ仮眠を取る。
トイレに介助が必要な人で、昼間トイレへ行く人でも夜はベッド上でおむつ交換ということに原則なっているが、どうしても夜もトイレへ行きたい人も何人か居て、ナースコールを鳴らすようにお願いするが、認知症もあって鳴らさない人が多いので、センサーマットをベッドの下に敷き、ベッドから下りてマットを踏むと音が鳴り、分かる仕組みになっている。
センサーマットを敷いている人は、五人に増えている。もちろん、重なる時もある。夜勤者両方が仮眠中で一人しか居ない時間帯に鳴ると大変だが、その時のために転倒の可能性が高い人から優先順位を決めている。ただ、その時のその人の状態によって、優先順位を守ったからと言って転倒が防げるというわけではない。
ケアハウスは三階建てだが、センサーが必要になると部屋替えをして一階に集められる。職員も一階に詰めている。二階、三階はできるだけ自立度の高い人に居てもらうようにしているが、二階、三階にも認知症の人も居るし、二階、三階へもおむつ交換に回るし、二階、三階でも転倒事故はある。
夜勤の相手方が仮眠中にコールが重なったり、認知症の人が起き出して訴え始めたりすることがあり、対応することになるが、一人での対応には限界があり、許容範囲を超えるとこちらの人格まで変わってしまいそうになる。いや、普段は社会的にフタをしている自分の本来の人格が出てしまう、と言うべきか。
もちろん一人での対応が困難な場合はもう一人の夜勤者を起こすように、ということは決まっているし、あくまで仕事中の仮眠であるのだが、ここで眠っておかないとあとがしんどいことはみんな分かっていて、相手を起こすことは憚られ、大抵、一人で頑張ろうとする。
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