第19話 ヨガ
アジャイを家にも招待した。義彦とインドで知り合った妻が、是非、と言ってくれた。
義彦と妻とは、インド・リシケシュのヨガアシュラムで知り合った。
義彦はリシケシュには約一ヶ月の滞在だったが妻はヨガにハマり、六ヶ月のヴィザ期限一杯までアシュラムで過ごしていた。日本へ帰ってからもヨガを続けていて、指導者コースも修了した。今は子供も小さいので教えてはいないが、いずれヨガ教室を開く、ということも考えているようだ。
アジャイを家に招き、妻はインド料理も得意なのでダルスープとチキンカレーにナンの食事を出し、喜んで食べるアジャイにヨガについて聞いてみると、アジャイはヨガをしたことがないと言う。
インドで生まれ育ったからと言ってヨガをやっているとは限らず、ヨガとは無縁の生活を送っている人の方が多い。日本に生まれ育ったからと言ってほとんどの人は日本舞踊とか琴とか日本の伝統的なものとは無縁なのと同じだ。
食後ではあるが、みんなでヨガの時間となった。義彦も久しぶりにやったし、小学校二年生の息子も本場の青年が加わってのヨガの時間に大はしゃぎしながら、一緒にアサーナーをやった。小さいなりにポーズが決まっていた。時々妻と一緒に教室にも行き、家でもやっている。
アジャイはヨガが初めてだそうだが身体が柔らかく、上手くポーズをこなしていた。いくつかのポーズをやり終えた後、だいぶすっきりした、と言い、心にたまっていることも取れそうです、と独特の感想を述べた。
90年代、義彦や義彦の妻がインドに滞在していた頃、日本ではオウム真理教へのバッシング報道が連日流れていた。義彦も妻もその頃日本に居なかったので、よく知らない。
何となく、職場ではインドに長く滞在していたことは公言していないし、アジャイが来てからもウヤムヤにしていて、この日、アジャイに初めて告げると、何で言ってくれなかったのか、と大きな目をむいて驚いていた。
まあ、ふらふらしてただけやから・・・。
当時、世間の話題を席巻したオウム事件のことを詳しく説明する気もしない。その時、日本に居なくてリアルタイムで体験しておらず、上手く説明できない。
最近、ヨガはブームになっている。
今の日本のヨガブームはインドから欧米経由で日本に流れた感じで、日本でヨガは元はインドのものだということは分かっているものの、敢えてそこは意識されない広がり方をしている。オウム真理教は元々は麻原彰晃がインドで修行して持ち帰ったヨガの勉強会から始まったことや、ホーリーネームはヒンドゥ語やチベット語であることなども忘れ去られているようだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます