第43話
テスト2日目。
早く終わるとはいえ、いつもより脳を使うから疲労が溜まる。
いつもはキツイな〜くらいに思っていたテストも、悟と一緒に勉強したから、今回はいつもより頑張れる。
田宮さんと萩原くんにも今度お礼をしなければ。
クラスの友達にはまぁまぁかなと言ったが、実はかなり自信がある。
せっかく4人で勉強したんだ、気合いはいつもより入っている。
「葵!今日のテストも頑張ろうな!」
「うん、お互いにね」
最近よく浅田くんが話しかけてくれる。
彼は友達が多い、私もその1人として認識してくれているのだろう。
嬉しい限りだ。
昔から何考えているか分からないと言われて、自信も無くなってしまっていた。
それでも取り繕わなくてもいい、私は私らしく居ていいと悟が思わせてくれた。
━━━━━「佐倉〜、今日遊ばない?」
「ごめん、今日はそのまま帰る予定なんだ」
「そっかぁ....じゃあまた今度誘うね!」
「うん、すまない」
小学生の時も、中学生になってからも周りと馴染めなかった。
みんなが嫌いなわけじゃない、周りには友達になろうと言ってくれる人が常に居てくれるのは凄く嬉しい。
「ねぇねぇ、もう佐倉さんを誘うの辞めたら?」
「え?なんで?」
「だっていつも断るし....」
「何度も断らせるのも悪いしね」
「そうなのかなぁ....」
小さい頃から男の子と間違われることもあって、普通の女の子と違って私は可愛くない。
だからなのか、いつも何考えてるか分からないとよく言われる。
愛想が良くないのは自分でも分かってるから、みんなと仲良くやれる自信がなかった。
昔から遊び相手も、本当に気を許せる相手も悟しか居ない。
「私って可愛くないよね」
「なに?急に」
私はいつもと同じように悟と一緒に帰っている。
小学生の頃からほぼ毎日登下校はいつも一緒。
「昔から男の子と間違われるし」
「あぁ....まぁそうだな」
「そうだなって....反応薄いな。悟も私のこと可愛くないって思うのか?」
「そうじゃねぇよ....ていうか、可愛いとかカッコイイとかどっちでもいいよ俺は」
「どういう意味だ?」
「別にカッコよかろうが可愛かろうが、俺は変わらずお前の幼馴染だってこと」
いつも素っ気ないのに、こういう時ストレートに言うの凄くずるいと思う。
でもこういう風に良い事も悪い事もハッキリと言ってくれるから、私も悟にだけは心を開ける。
「どうしたら友達ができるんだろ....」
「友達??」
「あぁ....たくさん欲しいって訳では無いんだ。私は感情表現が下手だが、せめて少しでも治して、苦手意識は持たれないようにしたいんだ....」
「....そんなに焦って治さなくてもいいんじゃないか?」
「え??どうして、今のままだと」
「だって、葵は葵だろ?」
「別に葵がそうしたいのなら俺は止めない、けど今の葵を作ったのは、他でもない葵の努力なんだ。スポーツも勉強も今までのように頑張り続けていれば、自然と葵のことを見てくれる人はたくさんできると思うぞ」
「まぁ.....葵は葵らしく頑張れってことだ、葵がどんなやり方を選んでも俺は応援してるし、ちゃんと見てるから」
俺が偉そうに言えたことじゃないがなと最後に付け加える。
私らしく....
「本当に何も変えなくて良いんだろうか」
「大丈夫だろ、ていうか既に何回か遊びに誘われてんだろ?仲良くなりたいって気持ちは本物なんだし、取り繕わずにそのまま伝えればいい」
「それだけでいいのか?」
「多分誰もが一緒に遊びたがるぞ」
本当だろうか。
でも思い返してみたら、誘われてもいつも断ってばかりなのに友達は欲しいと言い、自分から誘うこともない。
言ってることとやってる事がおかしい。
「そんな不安そうな顔すんなよ、葵は人気あるんだから大丈夫だ、応援してるから頑張ってみろよ」
いつもだ。
悟が応援してくれると、勇気と力が湧いてくる。
頑張ってみようかなって思える。
早速明日部活終わりに勇気を出してみよう。
「佐倉〜、今日は遊べそう?」
願ったり叶ったり。
私から誘おうと思ってたところだった。
「ちょっ....あんたまた」
「いいよ」
「ほら、毎回断らせるのも.....え?」
「い、いいの?」
「うん....たまにはな」
「えぇぇ!?まじ!?まじ!?どこ行こっか!」
その後はみんなと一緒に初めて遊んだ。
一生忘れられない、大切な思い出になった。
だからこそ、謝りたいと思った。
いつも断ってばかりで申し訳ないと。
「え?そんなの良いよ〜、むしろしつこくて申し訳ないと思ってたくらい!」
「ほんとだよ〜、人それぞれに事情があるんだからしつこく誘うなって前から言ってたのに」
「だって佐倉と一緒に遊んでみたいってみんな言ってたじゃん」
私はずっと甘えていたんだ。
彼女たちに。
同じ部活で共に練習してきているのに...私はずっと支えられてばかりだったんだ。
それからはただの女の子のように、ただ普通にみんなで楽しく遊んだ。
嬉しくて、帰ったあとすぐに悟に報告して礼をした。
友達と遊べたのは悟のおかげだから。
でも悟はすぐに否定した。
「俺は何もしてないだろ、葵が勇気を出したからできたことだ。頑張ったのは葵だよ」
「.....良かったな、葵。よく頑張ったよ」━━━━━
あれから私と遊ぼうと言ってくれる人が増えて、友達も増えていった。
何も取り繕わず、私らしく。
それからしばらくして悟と距離が空いてしまったことも、今となっては懐かしい記憶だ。
悟の優しさを知ってる人は少ないだろう...
私と悟が一番最初に出会ったきっかけも悟の優しさだった。
いつも1人で居た私の手を悟が握ってくれた。
一緒に遊ぼうと今とは違う子供らしい純粋な笑顔で言ってくれたのを今でも鮮明に覚えている。
今の悟も好きだけど、あの時の悟は可愛かったな。
私だから優しくしてくれてるのかな....なんて、そんなことは無い。
悟はいつだって誰に対しても平等だ。
優しさも厳しさも。
だから分かりにくい。
でも、今は思う。
彼の優しさを知っているのは私だけでいい。
私だけでありたい。
やはり独占欲というのを抑えるのは苦労する。
ここまで想っているのに、悟は恥ずかしがるだけで、あまり意識してくれてないように見える。
それが少し気に食わない。
少しくらい意識してくれたって良いじゃないか。
もう何年も片思いしているんだ、今更諦める気は更々ない。
もう決めたんだ、離さないと。
悟は誰にも渡さない。
どんな苦労も、悟の事を思えばどんなことでも乗り越えられる。
私の心は悟以外には渡さない。
そんなことを考えていたらテストはあっという間に終わった。
これで、2日間に渡って行われたテストは全て終了した。
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