第42話

いよいよ今日からテストが始まる。

今日と明日の2日に分けて行われ、それぞれ午前中で終わる。

テストはとてつもなく面倒だが、午前中で終わるのは最高だ。

今回はかなり力を入れて勉強したから自信はいつもよりある。

昨日だって.....昨日.....

思い出しただけで、机に頭をぶつけたくなる。

いや、勉強しただけで他には何も無かったし、自分の中では勇気出したんだから結果は良かったんだ。

特に何かやらかしたわけじゃないんだから気にする必要なんて無いんだ。

だが、好きな人と自分の部屋で2人きりというのは思い出すだけで恥ずかしくなる。

だが勉強を始めれば不思議なことに気にならない。

よくあの状況で集中できていたなと自分でも思う。


「おはよう坂村」


「おはよう」


いつもの爽やかフェイスで深見が話しかけてくる。


「自信はどうだ?」


「帰宅部の時間のあまり具合を舐めるな」


「自信あるみたいだな....俺はそんなに自信ないや」


少し苦笑いを浮かべながら言う。

部活に時間を割いてることの方が多いから、勉強は苦手なのだろう。


「テスト前まで時間あるし、今からでも振り返って良いと思うぞ」


「そうだな...最後まで粘ってみるよ」


少し重そうな足取りで自分の席へ向かっていった。

まぁ進級はできているんだから、最悪の場合は考えなくても大丈夫だと思う。

いつもなら騒がしい教室も流石に今日は控えめだ。

それぞれ友達と一緒に問題を出し合ったりしている。

いつもこんな感じなら静かに本を読めるというのに、やはり現実というのは思い通りにいかないものだな。

ホームルームも終わり、早速テストの時間がやってきた。


「じゃあ、解答用紙と問題用紙を配るぞ〜」


ただの学校のテストなのに、いつも妙に緊張する。


「では、始め」


開始の合図と同時に問題用紙をめくる音が鳴る。

シャーペンを走らせる音もあちこちから聞こえてくる。

問題用紙に目を通してみる。

大丈夫、少なくとも今目に映る範囲は問題なく解ける。

少し遅れ気味だが、俺もペンを走らせる。

テスト終了まで集中が途切れることは無い。

そうしているとすぐに時間は過ぎていく。


「よし、終了だ。1番後ろのやつ集めてきてくれ〜」


最後まで見直したけど特に見落としたところは無かったと思う。

ちょくちょく分からないところもあったが、多分点数も大丈夫。

.....多分大丈夫。

悪い点を取った場合に、特に何か罰が決められているわけじゃないが、不安なのは不安なのだ。

10分の休憩の後、また次のテストが始まる。


「よぉし、全員教科書はロッカーにしまえ〜。次のテスト始まるぞ〜」


そして解答用紙と問題用紙が配られ、またチャイムと同時に開始の合図がされる。

問題用紙を目を通す。

ほんと3人と勉強してて良かった。

あの勉強会で教えてもらっていなかったら悲惨だったかもしれないと思える内容だった。

まじ感謝、萩原、田宮、葵。

カンニングだと思われないように、近くにいる葵の席を見る。

なんの迷いもなくペンを走らせてるように見える。

部活で忙しいはずなのに、一体いつ勉強しているのだろうか。

あんまり見ているとカンニングを疑われそうなので、すぐに自分のテスト用紙に目を戻す。

全て解き終えて見直しを済ましたと同時に終了のチャイムが鳴った。

次のテストが今日最後のテスト。

集中しているとすぐ時間が過ぎていく。

だけどいつもより疲労が溜まっているのが分かる。

あと1時間だ。

あと1時間やれば、とりあえず今日は終わる。

短く感じる10分の休憩が終わる。

そして最後のテストも集中力を切らさずに終わらせることができた。


「よぉし、お疲れ〜。とりあえず今日のテストはこれで終わりだ」


よっしゃ〜と声を上げる生徒がチラホラ。

まだ明日もあるんだけどね。

テストの手応えは結構良い。

明日もこの調子で行きたい。

とりあえず今日はどうするか。

帰るのも良いんだが、気分が良いので出来れば勉強してから帰りたい。

荷物を整理して、とりあえず教室を出る。

すると、萩原と田宮と目が合う。


「坂村くん!」


萩原は手を振り、田宮は少しぺこりと頭を下げてこちらに近づく。

2人とも元気そうだが、テスト直後だからか少し疲れているようにも見える。


「テストどうでした?」


「おかげさまで手応えは良い感じだ」


「僕たちもばっちりだよ!」


ほんとこの2人と葵には助けられた。

今度お礼をしなくてはな。


「葵〜、一緒に勉強しないか?」


後ろの方で葵が勉強に誘われてる。

私も俺もと手を挙げる生徒が7、8人。

そんなに大人数だと勉強にならんだろ....


「あはは、相変わらず人気だね」


「流石にあれは疲れそうだけどな」


もうこれは人気者の宿命なのかもしれないな。

俺には一生分からない苦労だから、それを偉そうに語るなんてことは出来ない。

葵は少し疲れていても笑顔を崩さない。

すると、こちらに目を向けた。


「悟〜、萩原くんも田宮さんもお疲れ様」


「お疲れ様!佐倉さん!」


「お疲れ様です」


よくもまぁこの状況で俺らのとこに来れたな。

そのメンタルの強さはどこで手に入れたんだ?

群がっていた生徒は誰?という顔をしている。

この前の噂を知っているものは、またあの人?という顔を俺の方に向けている。

そしてまた群がる人達のところに戻っていった。


「みんなごめん、今日は予定があるんだ。また今度分からないところがあったらいつでも聞いてくれ」


えぇ〜と言いながら渋々葵の近くを離れていく。

だが、浅田は離れなかった。


「....2人ってのはダメか?」


「ごめんね、今日はちょっと」


「....分かった。俺頭悪いから、また今度教えてくれよ!」


「うん、いいよ」


葵の周りに居た人達が俺たち3人の横を通り過ぎながら帰っていく。

少し遅れて浅田も。


「.....チッ」


すれ違い様に舌打ちをして帰っていった。

多分俺にしか聞こえてない。


「.....なんですか?あの人、舌打ちして」


おっと聞こえていたみたいだ。

なんだか最近タイミングが悪いな浅田は。


「気のせいじゃないか?俺は聞こえなかったぞ」


「.....そうですか」


でも、この2人に面倒事が行くのは良くない。

この否定で引き下がるかは分からんが、まぁ大丈夫だろう。


「すまない3人とも、断る理由に使ったような形になって」


「気にしなくていい」


「僕も大丈夫だよ!」


「私もです、むしろ断りずらい時はいつでも使ってください」


さて、この4人で集まるのも勉強会以来だ。

そして4人で少し図書館で勉強して、帰ることになった。


「じゃあ、私たちはこれで。今日もありがとうございました」


「明日も頑張ろうね!」


「あぁ、お互いな」


そして2人は並んで帰っていった。


「私達も行こうか」


自然な流れで、また葵と一緒に帰ることになった。

少し暑苦しくなってきた日差しを浴びながら帰り路を歩いていく。


「もう暑くなってきたね....」


「そうだな、もう夏も近いってことだろ」


はぁ、憂鬱だ。

正直夏は嫌いだ。

夏というより、暑いのが嫌いなんだ。

寒さと違って暑さは防ぐことができない。


「夏といえば夏休みだよね....悟はなにか予定ある?」


「あるわけないだろ....」


そんなに友達居ないんだから。


「じゃあ夏休み覚悟しといてくれよ、私が連れ回すから」


「暑いのに勘弁してくれ....」


一緒に居れるのは嬉しいがな。

そして特に夏休みの予定を決めずに、昼ごはんを食べるためにレストランに入る。

そしてそこでカップル限定のイベントがあるらしく、店員にカップルと間違われてお互いに赤信号のように赤面したのはまた別の話。









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