第20話

「はぁぁ....」


「溜息をするな〜、幸せが逃げるぞ」


次の日の放課後。

また空き教室の掃除の時間がやってきた。

こんなの見たら溜息の一つや二つ出るに決まってる。


「わぁ〜、これは流石に凄いねぇ」


「私たちが加勢しても終わりに近づけるのかどうか....」


葉月先生の言っていたアテというのは、萩原と田宮だった。

知らない人じゃないから良かったと安心してしまうが、こんな場所に付き合わせて申し訳ない。


「....ごめんな、二人とも。大変な作業だけど手伝ってくれると助かる」


「ううん!全然大丈夫だよ!」


「私も何とか頑張ります!」


ほんと二人が優しくて助かった。

もしかしたら、これから二人で一緒にどこかへ行っていたかもしれないのに....

この先生は見境なく連れてくるからな。


「とりあえず今日もこのしつこい埃をどうにかしようか、荷物を整理するにもまだこれだと触れないからな」


「はい!」


「分かりました!」


「....はい」


今日は新たに二人が加わり、四人で掃除をする。

前回の二倍だ、これで少しは捗るだろう。

黙々と作業が進んでいく。


「あだっ!」


「萩原さん!?大丈夫ですか?」


「う、うん....ちょっと埃が目に....ちょっと顔洗ってくる!」


「私も行きますよ!」


そうして二人で出て行った。


「仲睦まじいな、あの二人は」


「そうですね」


こんな酷いところを掃除しているのに、あの二人見るとどこか癒される。


「....ていうか、アテってあの二人だったんですね」


「あぁ、図書委員の話し合いで面識があったからな、知ってる人じゃないと君はやりづらいだろう」


「ありがとうございます」


「君もあの二人のように素直だったら誰でも良かったんだろうけどな」


「これでも素直な方だと思いますけどね」


「ははっ!君にしては面白い冗談だな」


酷い言われようだなおい。

許すけど。


「すみません!今戻りました!」


「そうか....キリもいいし休憩にしよう、ほら先生の奢りだ、三人で好きな飲み物買ってくるといい」


「ありがとうございます」


さすが先生、一生ついて行きますよ。

そして休憩を終え、またキリのいい所まで進めた。

今回は四人でやったから、もうほとんどの埃はなくなった。


「あとは物の整理だな〜、今日はこれで終わろう」


「お疲れ様でした」


疲れた....バイト代欲しい....


「じゃあ私たちは先に行きますね」


「あぁ、すまないな二人とも」


「ううん!いいよいいよ!それじゃあね〜!」


「じゃ、またな」


四人で進めたからかなり早く終わったな。

ほんと二人が居て助かった。

今出たら二人の邪魔にならないだろ、俺もそろそろ帰ろ。


「この調子なら、次の作業であらかた終わるかもな」


その時にでも葉月先生に使っていいか聞いてみようかな。

まぁ結局使わないことになるかもしれないけど。

やっぱり図書室が良いんだよな....俺のベストプレイス....

はぁ....ほんと憂鬱。

まぁそんなこと気にしても仕方ないか。

本気のやつを邪魔するのも気が引ける。

最初からそんなつもりは毛頭なかったんだけど。


「本はこの前買ったし....なんかアイスでも食べようかな、今日頑張ったご褒美」


今日は一人で歩く帰り道。

なんか最近、誰かと一緒に帰ることが多かったからな。

誰とも喋らない帰り道もまた良い。

近くのコンビニの自動ドアをくぐり、アイスコーナーに向かう。


「何にしようか....あ、これ」


葵のお気に入りのやつ。

前回葵にあげたから結局食べなかったんだよな。

食べたことないし、買っていこうかな。

一応母さんの分も...

父さんはあんまりアイス食べないから大丈夫かな。


「ありがとうございます」


美味しいって言ってたから、間違いはないと思う。

まぁアイスだし、どれも食べてみれば美味しいんだけど。

ちょっと楽しみだな。

溶ける前に早く帰ろう。

その後、迷子の子供と一緒に親を見つけて、その後帰ったらアイスは溶けてしまった。


次の日


「え〜来週に球技大会がある。男子はバスケとサッカー、女子はバスケとバレー。出たい競技のとこに名前書いてくれ」


球技大会かぁ....

どれもあんまり得意とは言えないんだよな...

どれを選んでも足引っ張りそうだな。

というか出してもらえないだろう、てかそうしてくれその方が助かる。

でも選ぶのは選ばないとな。

この中で1番マシなのは....バスケかな....

葵の練習に付き合った事もあるし、ボコボコにされたけど。


「葵はバスケやるんだろ?」


「あぁ、そのつもりだよ」


お?浅田が名前で呼んでる。

結構良い感じに仲は進展してるということか。

あぁ想像したくないものまで想像してしまった。

やめよやめよ。


「やったー!葵が一緒にバスケやってくれたら百人力だよ!」


「力になれるように頑張るよ」


いやなれるだろ普通に。

でもこういう謙虚なところもまた葵の良いところだ。

嫌味な感じも全くない。

とりあえずバスケのとこに名前書いとこ。

どうせあんまり出れないし。


「俺はサッカーにしよ!」


このクラス結構運動部多いから意外と勝ち残りそうだ。

足引っ張った時のこと考えると....やめよ、怖いだけだ。


「ん〜今日はすんなり決まったな。じゃやるからには優勝目指せよお前ら」


男女ともにおー!と大きな声を上げる。

すごい盛り上がりだな。

このクラスで初めての行事だし、そりゃ盛り上がるか。

やるからには優勝か....俺はともかく、他のメンバーには男子バスケ部も居るみたいだし優勝は分からんけど、見てて楽しい試合にはなりそうだな。


俺はベンチでしっかり見せてもらいます。






  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る