第11話

「これからよろしくね!坂村くん」


委員会の顔合わせ。

俺は図書委員に入りたかったが、運が足りず結局美化委員になった。

目の前に居るのは、明石谷恵さん。

美化委員の活動を共にする相手だ。

めっちゃキャピキャピしてる。

多分素なんだろうな。

俺を見て良い人そうとか言ってくれたから、多分この人は良い人だ。


「よろしく」


俺は普通に喋ろうと必死である。

多分顔は引きつっている。


「なんか変な顔してるね?もしかして人見知り?」


「....すみません、喋るの得意じゃないから」


「全然良いよ〜」


あ、めっちゃ優しいこの人。

友達になりたい、絶対断られるけど。


「坂村くん、どこやりたい?」


「えっ....あぁ....ん〜、屋上とか?」


俺たちは今美化委員の清掃活動の場所を決めている。

普段の生徒の掃除では手をつけないところを中心に清掃活動をやる。

屋上はそんなに広くないし、やりやすそう。


「ん〜それもいいねぇ、私バレー部だから体育館裏がいいかな!終わったらそのまま部活直行できるし!」


へぇ、この人バレー部なんだ。

確かにこの人ちょっと背が高い。

でも体育館裏か、多分ここ草むしりもやらされるとこだよな....


「.....どうしようか」


「あ、もしかして体育館裏ってなんか問題あるかな?」


「いや....問題というか、ここ多分草むしりやる箇所だから、部活前に疲れるんじゃないかと思って」


「ほぉ.....確かに」


「屋上だったらそんなに広くないし、明石谷さんが急いでる時は一人でもできる範囲だから、まぁ体育館裏もやろうと思えばできるが」


「え!?だめだよ!一人でやるなんて!」


そ、そんなに反対されるとは思ってなかった。

むしろ俺放課後は勉強と読書やることないから、全然良いんだけど。


「ま、万が一の場合だよ....」


「そんな場合はありません」


部活優先タイプかなと思ってたけど、ちゃんとしてるんだな。

驚いた。


「ん〜、でも確かに屋上だったら早く終わるかもね、よし!じゃあ屋上で希望を出しとこうか!」


なんと俺の意見が採用となった。

まぁ希望が通ればの話だけど。

少し不安だったが、結果は希望通り屋上ということになった。

普段は生徒立ち入り禁止だから、ちょっと楽しみにしている。

屋上行くのって憧れるよね。


「やった!屋上行ったことないから楽しみ!」


どうやら憧れているのは俺だけではなかったようだ。

毎週火曜日に清掃活動をするということに決まった。


「じゃあ、決めとくべきものは全部決まったから、解散〜」


顔合わせの時間は終わった。

毎週火曜日の清掃活動。

さて、今日も課題出てるし図書室行くか。


「じゃあ坂村くん!またね!」


「え、あぁ、また」


そう言って走って部活に行った。

あんな感じの人がモテるんだろうな、友達も多そうだし。

あれだけ親しみやすい性格してると、俺はこの人と友達なんだと錯覚してしまう。

危ない危ない。


「俺も行くか....」


俺は歩いて図書室に向かう。

そういえば図書委員って今日からやるのかな。

去年確か顔合わせが終わったその日からやってたよな。

初日になった生徒がめんどくさそうな顔してたのを覚えてる。

まぁ俺なんだけど。

あと一人は萩原。

初日からとかついてないね〜とか萩原が言いながらやってたっけな。

懐かしみながら、図書室のドアを開ける。


「あ!坂村くん!」


「おぉ、萩原.....あれ、一人か?」


「うん、本当は居たんだけど....えっと、浅田くんだったかな」


あぁ、あの人か。

真面目ですとか言ってたのに、初日からこれか。


「なんか部活があるから〜って言ってたかな」


「そうか....災難だったな」


「ううん、大丈夫だよ〜」


お前ほんっと良い奴だな!!

怒っていいぞもっと。


「まぁ本当に部活なら仕方ないし、めんどくさくて来たくないという不真面目な人が居ても邪魔なだけだしね〜」


あ、笑顔だけどなんか笑ってない。

結構怒ってる。

けど良かった、ちょっと安心したよ。

なんでもかんでも許すわけじゃないんだな。


「はは、俺も真面目に生きよ」


「え?坂村くんはすごい真面目じゃん!僕すごい尊敬してるんだから!」


わっ眩しっ!

そんなキラキラした笑顔を俺に見せないでくれ!

心が浄化される!

すると、図書室の外から走って誰かが来た。


「すまない!浅田くんが来てないって聞いて!」


走ってきた人と目が合う。


「さ、さささ悟!?」


え、なにその反応。

俺っていつの間にか希少生物になってた?

息を切らしながら入ってきたのは、葵だった。


「あ、佐倉さんだ!なんで来てくれたの?」


「あ、あぁ....すまない、浅田くんが早速来てないみたいで、私が代わりに来ようかと思って」


「そ、そんな!悪いよ!佐倉さんも部活あるんでしょ?」


「確かに部活はあるが....これも立派な私達に与えられた仕事なんだからちゃんとしなければいけない、それに君一人に仕事押し付けることになってしまうのは良くない」


何この綺麗な優しさの押しつけあい。

萩原の性格も分かるし、葵の性格も分かるから、これからのやり取りは大体予想がつく。

これだと埒が明かない。


「まぁ、葵もこう言ってる事だし、今日くらいお言葉に甘えていいんじゃないか?」


「ん〜〜〜、坂村くんもそう言うのなら....でも、部活もあるだろうし、あまり長居しなくていいからね?」


「ありがとう....」


「いやいや!お礼を言うのはこっちの方だよ!」


「ほんとにすまない、浅田くんには私から言っておく」


「それは...お願いしとこうかな」


基本的に部活より委員会が優先される。

葵の言う通り、これは与えられた仕事。

勉強の一つだ。

学生の本分は勉強、ならばどちらが優先されるかは明白。

大会前だと別なのかもしれないが、今の時期はどの部活も特にそういうのは無い。

二人とも真面目な性格だから、浅田の行動が許せないのだろう。

俺はツイてるのか、ツイてないのか、またも葵と同じ時間を過ごすことになった。



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