第3話

こう言ってはなんだが、私は色々出来る。

スポーツも勉強も、私なりに努力して好成績を残すことができた。

もちろん私だけの力でできたことでは無い、友人や先輩達、そして先生や家族、どれか一つでも掛けていたら手に入れられなかったものだ。

私は本当に恵まれている。

そう感謝する日々の連続だ。

口数が私はそんなに多くないし、感情も表に出ないから、それ以外のことでなんとか友達ができないかと頑張っていた。

そうすると私の周りには一人、また一人と友人が増えていった。

結果を出すと、友人達は喜んでくれる。

その笑顔が本当に嬉しかった。


ほんの些細なことのようだが、私にとっては大きな違和感だった。

なのに、気付くのに時間がかかってしまった。


私の傍に、君が....悟が居ない。


気付いた時は、大きな距離が出来ていた。

いや違和感自体は、もっと早くに感じていたかもしれない。

私は見てみぬふりをしていたんだ。

友達が多くいるこの空間に甘えていたんだ。


喧嘩をしたわけではない、でもどこかで私が何かをしたのかもしれない。

どんなに離れていても、君の声を聞こうと思えば聞けたはずなのに、聞けなかった。

私のせいで君が傷ついてるかもしれないなんて、その事実を知るのが怖くて仕方なかった。

私が友達に恵まれたのは、他でもない君が背中を押してくれたからだ。


「友達??」


「あぁ....たくさん欲しいって訳では無いんだ。私は感情表現が下手だが、せめて少しでも治して、苦手意識は持たれないようにしたいんだ....」


「....そんなに焦って治さなくてもいいんじゃないか?」


「え??どうして、今のままだと」


「だって、葵は葵だろ?」


「別に葵がそうしたいのなら俺は止めない、けど今の葵を作ったのは、他でもない葵の努力なんだ。スポーツも勉強も今までのように頑張り続けていれば、自然と葵のことを見てくれる人はたくさんできると思うぞ」


「まぁ.....葵は葵らしく頑張れってことだ、葵がどんなやり方を選んでも俺は応援してるし、ちゃんと見てるから」


その言葉にどれだけの力を貰えたか。

どれだけの勇気を貰えたか。

その言葉のおかげで私は頑張れた。

君のおかげで、君が見てくれていたおかげで頑張れた。



....また君の声を聞きたい。

私が君になにかしてしまったのなら、謝りたい。

そんなこんなで時間が過ぎて、高校生活を迎えた。

悟とクラスが別れてしまった。

多分大丈夫だろう、教室も近いし、きっかけはいくらでも....


いくらでも.....


......いくら....でも.....


全ッ然話しかけられない!!

入学してもう半年が経っている、全然話しかけられない!!

ていうか悟どこにいるんだよ!

教室の前を通る度に中を見てるけど、どこにも居ないんだけど!

コホン....柄にもなく心が爆発してしまった。


「ねぇねぇ、葵」


「ん?どうしたんだい?」


彼女は明石谷恵(あかしやめぐみ)

バレー部の生徒で、私とは正反対で元気で明るい可愛らしい私の友達だ。


「なんか最近元気ないけど、何かあったの?」


そんなに元気がないように見えていたのか....


「....いや、なんでもないよ、すまない心配かけて」


「ならいいんだけど...あ!そうだ葵!今度服見に行こうよ!」


「あぁ、時間が合えば」


「やったぁ!!」


彼女の底抜けない明るさにいつも元気を貰える。

どうすれば、彼に話しかけることができるだろう....

私の悩みは尽きることがない....

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