足かき氷

 夏の暑い日。


 私はコンビニにアイスでも買いに行こうかと、昼の外を歩いていた。


 コンビニは公園を通った先の角を曲がったところにあるのだけど、いつもの公園の景色とは違い、『氷』と書いてある旗を掲げているのが見えた。


「足かき氷?」

 近くに行ってみると、見たことも聞いたこともない字面が目に飛び込んできた。


 大きな氷の塊がしっかりと固定されていて、暑さのせいか、私は目の前のインパクトにすんなりと負けてしまった。

「足かき氷、ブルーハワイ味ひとつ。」


 優しい笑顔で対応する、裸足の女性店員さんは注文を受けると、きれいに伸びた足の爪で氷の塊をガリガリと削っていく。ネイルとかは一切していないのに、爪の手入れが丁寧にされているのがよくわかる。


 ガリガリ、ガリガリ、ガリガリ、ガリガリ。


 長く伸びた足の爪を使っているとはいえ、足が少しづつ冷たくなっていくのか、店員さんの顔も、どこか気持ち良さそうに見える。


 ガリガリ、ガリガリ、ガリガリ、ガリガリ。


 機械で削る音とは違う、聞き慣れていない音だけが公園内に鳴り響いている。


「お待たせしました!足かき氷です!」

 店員さんの姿に見惚れているうちに、いつの間にか注文したものが出来上がっていた。


 溶けてしまわないうちに、近くのベンチに移動し、スプーンを手に持つ。

「いただきます。」


 店員さんのきれいな足の爪で削られたかき氷が、口の中全体に広がっていく。機械を使って削っていないせいか、氷の食感にバラつきはあるけど、これはこれで意外と悪くない。むしろ、この暑さにはふわふわしたかき氷よりも、こっちのほうがピッタリだ。


「ごちそうさまでした!」


 足かき氷をあっという間に完食し、頭も体もひんやりして家に帰っていく。

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裸足グルメ短編集 裸足ストーリー @hadashistory

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