裸足グルメ短編集

裸足ストーリー

足おにぎり

 猛暑日。


 私はこの暑さにうんざりしながらも、ひとりで海に来ていた。

 私以外にも、子どもや外国人、サーフボードを抱えたサーファーたちで賑わっていた。

 そんな様子を眺めながら、私は日陰でゆったりと、ひんやりとした時間を過ごしていた。


 少し歩いたところには出店があり、海を訪れた人たちのお腹をすかせるには十分すぎるほどの匂いが漂ってきている。

 気づけば私も出店のある通りに向かっていた。


 出店が並ぶ通りをわくわくしながら歩いていると、気になる看板が目に入ってきた。


『足おにぎり販売中!』


 足おにぎり?足で握ったおにぎりってこと…?


 定番料理を売っている出店は他にたくさんあったけど、私はなぜだか、その『足おにぎり』という食べ物が気になって仕方がなかった。


「すみません。足おにぎり?……ください。」

「三個入りと五個入り、どちらにしますか?」

「じゃあ…、三個入りで。」


 バンダナを頭につけ、肌はきれいに日焼けした女性の店員さんが、特に驚く様子もなく優しく対応してくれた。


 私の注文を受けた後、店員さんは履いていたビーチサンダルを脱ぎ、洗面器に入った液体で念入りに両足を洗った後、今度はボウルに入った液体に両足をつけ始めた。


 おそらく、洗面器のほうは水で、ボウルのほうは塩水なんだろう。


 そして、塩水を足全体に馴染ませた後、桶に入った白飯を片足の裏に乗せ、両足で軽く挟み込み、コロコロと転がし始めた。


 お米が外から溢れそうに見えるけど、指の付け根に近い、足の裏の特に面積が広い部分で、器用に形を整えていく。


 店員さんの足を見ているうちに、気づけば注文したものが完成していた。


「お待たせしました!足おにぎり三個入りです!ありがとうございました!」


 パックに入れられた出来立ての足おにぎりを持って、もとの場所に戻る。


「……。いただきます…。」


 足おにぎりを一個手に取り、少し不安になりながらも、記念すべき一口目を口に運ぶ。


「……!おいしい!」


 今まで食べてきた塩おにぎりとは違う、どこか特徴的な塩味。足で握ったらお米が潰れちゃうんじゃないかと心配していたけど、手で握ったものと同じくらい、お米一粒一粒がしっかりとしている。


 店員さんが足で握ったおにぎりを味わいながらも、お腹がすいているのもあって、二個目、三個目と、次々に食べていく。


「ごちそうさまでした。」


 店員さんの日焼けした足を思い出しながら完食し、心も体も満たされる。

 そして、次にまた海に来るのが楽しみになった。

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