第2話 キュブスキー教授の講義(一限目キュッチャニアの神話)
皆さん、こんにちは。私が誰かについては前の話を確認するきゅー。今日はキュッチャニアにおける神話について講義を行う。早速テキストの92ページを開くきゅ。
キュッチャニアでは全土において広くお狐様信仰が見られます。地域差はありますがお狐様が自分達を救う存在としています。狐は他の文化圏では良いことの前触れであったり、逆に悪いことの象徴だったりと両面性を持っています。そのため常に救いの象徴とするキュッチャニアは特徴的と言えましょう。今回は一例を紹介したいと思います。なお、本講義は2016年の学説を一部アップデートしたものです。
昔昔いたずらが大好きなお狐様がました。彼女は他を笑わせることが大好きでしたが、行き過ぎたいたずらによってついに神様を怒らせてしまいます。「狐よ。少しは他人を思いやることを知りなさい」そう言った神様によってお狐様は何もない荒野に落とされてしまいました。
お狐様はいたずらする相手を求めて荒野を彷徨うが誰もいなません。ある時足元に小さなモモンガたちがいることに気がつきました。植物さえない荒野でお狐様の影を利用していたのです。お狐様にとって小指ほどもない小さなモモンガたちは興味がありませんでした。お狐様は気にせず荒野をさまよい続け、一方でいつ誰かと会っても良いように新しいいたずらを練習していました。
ある日の練習中足ににチクチクする痛みを覚えてみてみるとモモンガたちが足を叩いていました。理由を問うとモモンガたちは言いました。「あなたの芸が面白く、面白さのあまりに地面を叩いていたところ足に当たってしまったのです」
お狐様は何もない荒野でついに相手を見つけたのです。それからしばらくはモモンガたちにいたずらを披露するようになった。ある時モモンガたちの元気がないことにお狐様は気がつきました。
「夜毎鬼たちに襲われているのです。しかし、何もない土地ゆえに武器さえ作れないのです」
モモンガたちを友人と思っていたお狐様は言いました。
「それは辛いでしょう。私には三本の尻尾があります。一本をあげます。それで武器を作りなさい」
モモンガたちはお狐様の尻尾から剣を作り鬼たちを追い払いました。その剣はとても丈夫で切れ味が良く鬼たちはひとたまりもありませんでした。モモンガたちはお狐様に感謝しました。
再び荒野を彷徨っているとモモンガたちの数が増えてきました。観客が増えたお狐様はますますモモンガたちを笑わせたといいます。
ある日モモンガたちが深刻な表情でお狐様に話しかけた。「夜寒くて子供達が震えています」と。モモンガの子供たちはお狐様にとってとても大切な友人です。
「わかりました。私の尻尾を一つあげます。それを使ってテントを作りなさい」
こうしたモモンガたちは夜暖かく眠れるようになりました。
またしばらく彷徨うと今度は少し変わった土地につきました。雲に覆われており光のささない土地です。モモンガたちは。「暗くて何も見えません」と言いました。
「わかりました。私の尻尾を一つあげます。燃やして灯りになさい」と。こうしてモモンガたちは光を手に入れました。
一方尻尾を三つとも失ったお狐様はすっかりて力を失ってしまいました。自分たちのために力を失ったと知ったモモンガたちはとても悲しみました。しかし、お狐様は言いました。
「良いのです。私のために笑ってくれたことへのお礼です」
「もう私には尻尾がありません。ですが少しだけ力が残っています。一人だった私に付き添ってくれたお礼にこの土地で暮らせるようにしてあげます」
「こぁーーーん」お狐様は鳴きました。すると雲が晴れ光がさしモモンガたちが住めるようになりました。
力を使い尽くしたお狐様はその大きな体を横たえると言いました。
「私はここで終わりです。私の血肉を使って農業をなさい。私の涙を水となさい。私の毛皮を服となさい」
するとみるみるうちに涙が川となり骨は山脈となり血肉は豊かな土地になりました。これ以来モモンガたちはお狐様を大切に祀ったと言われています。
キュッチャニアにおいて以前は大切な人にタッチする風習があると言われているが、それはこの伝説に登場するモモンガたちの行動に由来したといいます。 しかし、現代におけるキュッチャン総統を叩くイベントは伝承とは全く無関係であり、総統の政策に対するモモンガたちの反乱にすぎないことが分かっています。
このようなお狐様伝説はキュッチャニア各地に残っているが、研究は進んでいないのが現状きゅ。これらを解明することはキュッチャニアの文化史を紐解くことになるきゅー。モモンガ諸君が住む地域にもこうした伝承が残っているはずきゅー。どんぐりばかり注目せずたまには図書館などで郷土資料を読むといいきゅ。では本日の講義はここまで。
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