第2話



 そうと決まったら、まずは拠点探しから。

 実体験としては異世界転生モノは初体験だけど、サバイバル系のゲームとかも昔好きだった記憶が。

 その経験をいかしつつ、さっきまで、歩き続けていた方向とは逆方向に歩きながら、海岸と藪の縁あたりで石とか枝を拾い集める。


 尖ってる石を使って、ナイフっぽいものを作り、藪の中から、紐に使えそうなツタを取りつつ。

 石と枝、取ってきたツタを使って、即席の手斧か鉈っぽいものを作成。


 それを使って藪の中に突撃っ―――


「―――は、さすがに無理ですね、はい」


 もちろん虫も嫌だが、蛇とか居そう。


 お腹とかのどの渇きとかは、今のところ問題なさそうだけど、ケガとかまでは流石にどうなるかは試したくない。

 さっきツタ採るときに枝が跳ね返ってきて、手に当たった時痛かったので、痛覚とかは普通にあった。


 しばらく歩いてみて、陸側に入りやすそうなところを見つけて、休めそうな場所を探そうと思う。

 さっきまでは時間が経っていないと思っていたが、日が傾きはじめており、まだ時間はあるが海側に沈んでいきそうな様子はある。


 感覚が少し鈍くなってるのかな?

 さっき手に当たった枝も、勢いの割に、そこまで痛くなかったような気もする。


 ともあれ、拠点拠点。


 このまま日が落ちると、砂浜で過ごすことになりそう。。。




















「―――はい、予想通りでした」


 ゆったりと一定のリズムで聞こえてくる波の音の中、月明りと星空の下。

 今日はこのまま、砂浜で待機かな。


 寒さ暑さは特に感じない?

 お腹とのどの渇き、あと便意も大丈夫そう。


 疲労感も特にないし、眠気もないけど。。。

 痛みは感じるんよねぇ。


 いまだに少しいろんな感覚が鈍いような感じはしているけど、それが不利になるような状況にない以上、とりあえずスルー。

 このまま夜明けまでなんとか過ごそうか。


 砂浜で手細工でもしてようかな?

 尖ってただけの石のナイフと、これまた尖った石を括り付けただけの石の手斧にもう少し手を入れたい。


 今の手斧で、細めの木を切って長めの棒を手に入れて、石の穂先をつけた槍っぽいのを作りたい。

 槍と言うか、柄の長めのブッシュナイフ、大鉈みたいなのを作って、茂みを刈りつつ、陸側に少し移動しておきたいかな。

 いつか海が荒れないとも限らないので、早めに陸側に拠点を作っておきたい。

 あと、雨も降ったら困る。

 疲労感や体調不良は感じないので、病気になったりはしないような気もするが、しないとも限らない。


 そのための拠点づくり。のための探索。のための道具作り。のための道具作り。


 明日の生活のまでの第一歩!

 細かな物作り、大切。


「細かな作業は、嫌いじゃないし」


 その前に、まずは仮拠点。

 日が沈む前に、いくつか使えそうな素材、道具は集めつつ、仮拠点にできそうな場所を確保。

 集めた流木、枝を組み上げて、焚火作成。

 枯草なんかを種火にしつつ、ポケットに入ってたライターを使い、火を育て、大きくしていく。


 遠くに鳥の声なんかは聞こえていたが、どう猛な肉食系動物がいないとも限らないので明かりをともす。

 まあ、焚火が動物を避けるってのも、実際は確実性はないようだけど気持ち的にね。




 明かりの近くに平たくて大きめの石を置いて、石のナイフをごりごりとこすりつけ、尖らせていく。



 ―――ごりごり



 ―――ごりしょり



 海水をかけて濡らしつつ、ごりごりしょりしょりと削る。


 砂浜にはありがちな打ち揚げられたペットボトルとかブイ、ビニールボートやらが見当たらなかったが、流木、ヤシの実っぽいのは結構あったので、器にちょうどよさそうなヤシの実をゲットして、海水は掬えた。


 ―――ごりごり


 ぼろぼろに朽ちた繊維で織った袋みたいなのはあったので、ワンチャン状態のいいのがあればそっちも使えそう。

 他に使えそうなものがあれば、また明日にでも探してみようかな。


 ―――しょりしょり


 やっぱり異世界転移?なのかなぁ。。。








 こういうのなんか楽しい。

 普段の生活からは、かなりかけ離れた行動。動作。

 石斧のは先も研ぎつつ、ただ木を切るためにはあまり鋭すぎると刃先が欠けそうなので、刃先の厚さを変えずにごりしょり研ぐ。

 結局石器なので、どうしても鋭さに欠けるのは仕方ない。

 筋力と修復でごり押すしかないかな。


 これにもう一つ、槍斧の穂先になるやつもゴリゴリ。

 こっちは夜が明けてから、斧で木を切ってから、長めの丈夫な枝を使って、刃先が▷みたいな柄が長い斧っぽいのを藪払いに使いたい。

 石の手斧は無理でも、長めの斧なら藪払いになんとかなりそう?ならない?

 分類的には槍斧と言うよりも、ロングアックスか柄の長いハチェットナイフになるのかも。

 まあ、そこら辺のネーミングなんかはともかくとして、石のナイフや手斧だと柄が短くて、ちょっと抵抗が。藪の中だとほら、ハチとかヘビとか。










「ふふん、尖らせた、尖らせてやったぜー」


 きらりと光らない石器の刃先を空に掲げて月の光を浴びせつつ。

 うん、そう、光らないのよ。


 石に詳しくないもんで、普通の石かどうかとか、もろいかどうか、割れ方とかで区別するしか、ないかな。


 それでもやり切った感を出しつつ、ゴロンと横になる。

 眠気はないものの、ふはーっと息を吐きながら砂浜の上に寝転がり、月と星空を眺めながら達成感にふける。


 手持ちの石ナイフは光らないが―――

 ―――頭上の月と星はきらりと光る。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る