いきなり無人島?のんびり生活

くぉんくぉんFox

第1話



 閉じた瞼の上から、眩い光が突き刺すように降り注ぐ。


 昨日は、仕事が終わってから倒れるように寝たのだったか?それとも飲みすぎて、酔いつぶれて眠ってしまったのだろうか?

 それにしては、いつも感じる突き刺すような頭痛に苦しめられることのない目覚めや、常に感じていた倦怠感もなく、体も快適なように感じている。



 起き上がり、体調を確認。周囲の状況を確認していると。

 青空。透き通った目が覚める、抜けるような青空。

 まあ実際に、目が覚めたのだけど。


 眼だけではなく頭の方も目覚め始めると、いろいろな違和感を感じる。

 体調しかり、服装しかり、いる場所しかり。


 碧く輝く海原。

 白く輝く砂浜。


 通勤時にいつも着ていたちょっとくたびれたスーツ姿。


「うん、すべてがすべて、違和感でしかない」


 さて、、、どうしよう?




















 まずは、詳しく現状確認。


 今いる場所。目の前に海、座り込んでる場所は砂浜。

 付近には特に建物や護岸壁などの人工物はなく、海水浴場や漁港等などではなさそう。

 陸側には道路なども見当たらない。雑木林というか、茂みが広がっている。


 体調確認。

 寝起きはいつも、寝不足や二日酔いで常に痛かった頭の痛みも、今は感じない。

 少しぼやぁっとした感覚の鈍さはあるような気もするが、これは寝起きのせいか。


 持ち物確認。

 着ているのは出勤用のくたびれたスーツ。

 右ポケットに車のカギ、家のカギ、職場のカギをまとめたキーホルダー。

 左ポケットにタバコ吸わなくなったのにいまだに入れているライター、唇かさかさになるので、常備している薬用リップ。

 スーツの左胸の内ポケットの中に入れていた長財布。

 ワイシャツの胸ポケットに挿していたボールペンが一本と布マスクが一枚。


 無くなった物で言えば、ズボンのポケットに入れていた、スマホ。

 ユニフォームや仕事の書類などを入れていた鞄は手持ちではなかったためか、なくなっている。

 鞄があれば、中に栄養ドリンクや頭痛薬、ボディーシートやペットボトルのドリンクなんかも入っていたのだけど。


「あー、ほぼ手ぶら状態?スマホがないのが痛いなぁ」


 ここがどこなのか、日時なんかもわからないし、なにより連絡が取れないのがつらい。

 まあ、電波が届くのかすらわからないけど。


 起きたら、急にこんな状況って、昔読んでたラノベの異世界転生モノとかぐらい?

 でも、転生してるわけじゃないと思うんだけど??


「ここで、ぼーっとしてるわけにもいかないので、周りの探索でもしてみるか」


 歩いてると、普通に街に出れるかもしれないしね。









 さすがに藪の中を突っ切るのはあれなので、砂浜と藪の周囲をぐるりと歩く。

 どこかでふいに藪が切れ、道につながっているかもしれないし。


 右手側に海、左手側に藪を見ながらぐるーりと。


 右手はずーっと白い砂浜と海。たまに砂利浜。

 左手はずーっと藪。たまに雑木林のような、太めの木が生えていて。


 目の前にどどんと岩場。

 右手はもちろん海。

 左手は崖っぽく、どうにも通れそうにない。


 さて、どうしよう?


「まぁ、逆側に歩くしかないんだけどね」


 さっきまで歩いて来た報告を逆戻りしながら。


 それにしても、今何時ごろだろう?

 目が覚めてから、だいぶ歩き続けて、かなりの時間がたっている気がするのだが。。。

 運動不足だったはずの体も、特に疲労を感じることなく、動かせている。

 おまけに、お腹も空かないし、のども乾かない。



 ―――はい、いまだに困惑中の私です。



 再び現状確認のお時間です。


 体調、空腹感、渇水感ともになし。

 疲労感や、筋肉痛などの体調不良も特になし。

 全体的にぼやぁっとした感覚は、、、これはいまだに続いているのかな?



「おなかが空かないのとか、のどが乾かないのは、現状だと助かる事だけど」


 これはいよいよ異世界転生チート来たのか?

 ブラックな職場だったが、繁忙期とそれ以外がはっきりと分かれている業態だったので、時間があるときはスマホで読んでた記憶が。

 特に田舎での、のんびりした農家ものとかスローライフ系好きだったなぁ。。。


 自分の父親も定年後は畑を借りて、農業しつつ、のんびりしてたっけ。

 実家に帰ったときとか、完全無農薬の完熟採れたての新鮮野菜が食べれてよかった。

 枝なりの完熟トマトが特に美味かった。

 大量に採れるので、完熟のトマトを絞った、塩以外無添加のトマトジュースが最高。

 うん、自分でもやってみたいなとは思っていた。





「―――ま、よくわからない状況、それならそれなりにやってみますか」



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る