第9話 緊急クエスト

石動がプレイヤーになった翌日。いつものように山中グループに絡まれた。


「おい、光るだけのカスが来たぞ!」


「やめろよ~可哀想だろ~」


ギャハハハと下品な笑い声をあげる。


「テメェみたいな雑魚が一生拝めない武器を見せてやるよ!!」


そういって武器を取り出した。見たところ普通の片手剣にしか見えないが・・・


「HR等級の武器だ。お前みたいなのが二度とお目にかかれない装備だ。」


いや、まあ確かに初めて見たけど・・・そうこうしているとスマホに通知が入った。

緊急クエストだそうだ。


「え~っと、この区域のプレイヤーでダンジョンの掃討にかかると。」


なんでもダンジョンの数が一気に増えたから何個か潰しておかないとパンクするってか・・・あ、学校側からも通知来た。プレイヤーは公休扱いで掃討にかかっていいと。


「しゃあ~ラッキ~!」


そういって山中グループは帰っていった。

俺も帰ろうと準備していると石動に声をかけられた。


「一緒に行こ~!」


「ああ。一旦家帰って荷物置いてくる。」


「あ、私家遠いから荷物置いて行っていい?」


「俺の家に?まあいいけど。」


「ありがと~」


鞄を置いて、ついでにアイラ達に一言言っていく。


「おい、今からちょっと出かけて遅くなるかもしれんけど、飯は作り置きあるからそれ食えよ。アイラ、こいつ頼んだぞ。」


「はい!任せてください!」


返事を聞いてから家を出る。


「よし、行くか。」


「うん!」


まず最初に狙ったのは家から一番近いDランクのダンジョン。中は洞窟型でそこまで暗くはない。


「じゃあ、ちゃっちゃと倒していくか。」


「りょーかい!」


そう言って武器を構える石動。剣だが、普通の片手剣ではなく両刃の直剣だ。鍔の部分には青の宝玉が埋め込まれている。


「武器変えた?」


「うん、昨日君がトイレ行ってる間に魔石加工で作ってもらったの。」


「あの一瞬で・・・」


やべぇな協会。


俺も構えて目の前の敵に集中する。


モンスターは・・・ゴブリンか?少し数は多いな・・・


「よし、やるか・・・」


俺と石動は同時に飛び出していった。

俺は斬撃を飛ばし何匹かまとめて斬る。石動はというと音響を魔石を介して剣にのみ発現させサクサクと斬っていく。


「おぉ、それ凄いな。」


「でしょ!」


確かに石動の武器は便利だ。ただ・・・


「それ魔力消費えぐいだろ?」


「そうだね・・・」


今の戦闘で3割ほど魔力が減っている。魔石加工で作る武器には魔石を嵌め込む必要がある。その魔石に魔力(=MP)を込めることでその魔石の特性が剣に反映されるのだが、この剣は特殊らしく、石動の魔力を使ってしまうのだ。


「まあ、俺はまだ余裕あるし、俺がモンスター倒すからその間に休んでて。」


「うん、ごめんね。」


「気にしなくていいよ。」


モンスターを倒していくこと数十分。洞窟の奥にたどり着いた。そこにはゴブリンジェネラルとゴブリンキングがいた。


「強いな・・・」


そう言って再び武器を構える石動。魔石加工で作ってもらった剣にはもうすでに魔力が込められており青く光っている。


「よし、やるか!」


発熱を発動し炎を発生させる。炎を発射で飛ばすが弱いな。もっとこう火力をぎゅっとしてぼっ!っとなるかと思ったけど・・・

あ、なら炎を一点にためればいいんだ。あの有名な漫画でもやってた。


「うおぉぉぉぉ!!死ねぇ!!!」


凝縮した炎を発射する。熱線となってゴブリンキングの脳天を貫く。


あぁ、うまくいったけどこれあれだ。熱籠るわ。思考も鈍ってきた・・・

石動は魔石加工の剣でゴブリンジェネラルを斬る。が、少し浅かったようだ。一撃では倒せない。


もう一発!!発熱一点集中。凝縮して発射する。


「ッチ!肩か。」


「えぇい!!」


石動が肩を失ってひるんだゴブリンジェネラルの首を刎ねる。


「よし!」


ダンジョンをクリアした。


『レベルが上がりました。』


Lv21→25


『スキルを獲得しました。』

・HRスキル:吸熱

・Rスキル:放熱


吸熱と放熱か・・・放熱があれば発熱による熱籠りどうにか出来るかもな・・・


「あ、見てなんか落ちてる!」


「アレは・・・」


肉?


「オークの肉だって!おいしいのかな!?」


「取り敢えず持ち帰ってみようぜ。肉を仕舞ってダンジョンから出るぞ。」


クリアタイム30分・・・残りのダンジョンの数と今の減り具合から考えて日付変わる前には終わりそうだな。


「最低でもあと5か所は潰そう。」


「じゃあ、ここ行かない?この場所から徒歩5分だって。」


Eランクダンジョンか。


到着した。ここは・・・洋館か。


「洋館かぁ・・・」


「どうしたの?」


「いや、前に低ランクだと思ってダンジョン化した洋館に入ったら何故かダンジョンのランク上がって死にかけたんだよ。めっちゃ逃げ回って勝ったけどさ。」


「えぇ・・・そうなの?」


「まあそんなこと滅多にないだろうけどね・・・」


そういって中に入る。


中は・・・ほこりっぽいな。歩くたびギシギシと音がするし、床も抜けてるとこがある。モンスターはいないようだな。


「よし、ちゃっちゃと終わらそうぜ!」


「うん!そうだね!」


なんだよこれ・・・ゾンビ?みたいなのが動き回ってる。


「どうしようか・・・」


「石動、音響発動し続けて自分守ってて。」


「う、うん・・・」


発熱で極限まで炎を貯める。


「発射!」


一帯のゾンビを焼く。まだいるな・・・


放熱を使って熱を出す。


「斬弾・・・10連!」


MP最低消費の連続切りを飛ばし幅1m程度の斬撃を飛ばす。


「ハァ・・・ハァ・・・疲れた。」


『レベルが上昇しました。』


Lv25→26


『スキル:斬弾のレベルが上昇しました。』


斬弾Lv5『斬撃のカスタマイズが可能になりました。』


どの程度のカスタマイズが可能なのかにもよるけど・・・戦闘の幅は広がりそうだな。


「お疲れ様。」


「あ、ありがとう・・・」


「まだ終わってない感じがする・・・」


そう良い終わると同時に地面からボコッと音がした。


「こりゃあまた随分とでかいのが出てきたな・・・」


《EXボス:アンデットキング【アベル】》


名前からして西洋の骸骨か・・・ゾンビとかスケルトン的なのはこいつらのお仲間みたいな感じかな? 武器は大鎌。リーチはこっちの方が上だけど、攻撃力はあっちが上だろうなぁ・・・ アンデットキングの頭上から1本の矢が降り注ぐ。バックステップで回避する。


「あっぶねぇな。隠れて見えないけど後ろに居やがるな・・・」


アンデットキングがチラッとこっちを見た。その瞬間に斬撃を飛ばす。

当たった?そう思った瞬間、鎌を振り回して斬撃をかき消す。そして俺めがけて走ってくる。


鎌を振り下ろしてくる。間一髪避ける。が、一瞬で距離を詰めて振った勢いのまま回転して下から切り上げてきた。咄嗟に防ぐが、そのまま吹き飛ばされた。

壁に激突する寸前に受け身をとる。そしてすぐにアンデットキングの方を向くと・・・ 目の前で大鎌を振りかざしている。


あ、これ死んだな俺・・・そう悟って目を瞑った瞬間だった。


ガキンッ!!という金属のぶつかり合う音がした。


「何してるの!?早く立って・・・結構きつい・・・」


石動の声にハッとして立ち上がり鎌を思いきり蹴り飛ばす。


「極光の威光発動!」


放熱+発熱+発射


極限まで炎の温度を上げて体内に籠った熱を排出していく。室内の気温が少し上がったのを感じる。炎が蒼く変化した辺りで温度の上昇を止め発射する。


「オラァ!!」


着ていた衣服に着火して悶えている。しかしまだ決め切れていない。


「えい!!」


石動が倒れたアンデッドキングの脳天に剣を当てる。


「グオォォァァアァァ!!!!」


獣のような断末魔を上げて散っていく。


「クリアした!!ねぇ!ボス倒したよ!!」


「おう、そうだな・・・」


排熱が追い付いてない・・・まだボーっとする。凍結系のスキルが欲しい・・・

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