第6話 交渉

アイラを家に置いて協会に向かう。昨日寝る前にイザクと話し、協会と交渉することにした。

その内容は(異界の記憶は俺の中のイザクであり、交代の際に苦痛が生じる)を前提にこっちの要求を通す。交代できるかは昨日の晩に確かめた。まあ、拒否られても最悪俺の命を盾にしたらいつ手に入るかわからない異界の情報を手に入れることができなくなる可能性を考えたら乗らない手はないだろう。それに一旦情報を持ち帰る時間を与えることでその貴重性に気づくだろうし。


【入らねぇのか?】


「緊張するの。仕方ないだろ。」


いや、まあ俺が雑魚いだけだろうけど・・・


「あら?草間君!何か持ち込み?」


この前の受付のお姉さんが俺を見つけ手を振って声をかけてくる。


「えぇ、とっても耳寄りな情報を。」


情報の希少性と混乱を招く可能性を考慮し奥の応接室まで案内してもらう。


「それで?その耳寄りな情報って?」


「いま世界で発生しているダンジョンのその中の生物についてです。」


驚いた顔をした直後に席を立ち「ちょっと待ってて!」と言って出ていった。

戻ってきた受付嬢が連れてきたのは、最強のプレイヤー母神の率いるチーム開闢の光のNo.2である村瀬だった。


「君が草間君かな?」


「えっあっはい!」


「で、詳しく聞いてもいいかな?」


「えぇ、もちろんすべて話しましょうとも。ただし、こちらの条件を飲んでもらいたい。」


「ふむ、言ってごらん?」


「戸籍を一つ用意していただきたい。」


「・・・理由は?」


理由はまあアイラを国民としての権利を享受させるためではある。話し合った結果家に常駐してもらって妹を、ひいては家族を守ってもらうためだけど。元々吸血鬼ってだけでステ高い上に自己蘇生、自己再生あるし。相手のエネルギーを奪うことができるからセキュリティとして完璧だ。


「この情報に関連して必要なのです。」


「良いでしょう、手配しておきます。」


やっぱりな、国が関連しているのと村瀬の父親が有力者であることからいけるとは思ってた。


「ではまず、情報の出どころですが、俺の中です。」


「中?」


「えぇ、先日攻略したダンジョンでのドロップアイテム、異界の記憶は俺の中に入り込みました。」


「・・・なるほど。」


「そして、その倒したボスの魂が俺の中で同居している形です。」


「そのボスに変わることはできるかな?」


「えぇ。ただ、魂に密接にかかわってくるので交代するときに、内側から引き裂かれるような痛みと精神に途轍もない苦痛が伴うんです。」


「申し訳ないがお願いできるだろうか。今後の作戦のためにも、願いは必ずかなえるし、今回の交代に伴う苦痛に補填もしよう。」


「わかりました。おい!出てこい!」


手のひらでパシパシと頭を軽く叩く。別にこの行為に何か意味あるのかと聞かれたら特にないがなんとなくそれっぽいじゃん?


「よお、じゃあ話していくぜ?」


【あんま失礼なことするなよ。】


イザクが異界の情報について話していく。


「以上だ。」


村瀬は顎に手を当てて考え事をしている。


「なるほど・・・ありがとうございました。では、報酬ですが、戸籍と現金1千万でよろしいですか?」


「1千万!?」


マジ?


「え、あっいや・・・えぇ?」


「では振り込んでおきますね。」


そういって去っていった。


取り敢えず兄の学費に当てよう。あとは妹の進学費用・・・俺の学費にも当てよう。

騙したようで気が引けるけど、いやまあ騙したんだけど・・・


実際に交代するときに俺の魂に傷がつくから経験値が持ってかれるからデメリットがあるのは間違いないから、命がけで手に入れた経験値分の補填だと思っておこう。あとは情報料ってことで。今後の展望に役に立てばいいけど。

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