第16話学校再開

 ゴールデンウィークをが終わって、いつもの生活が戻ってきた。郷子は温也との結婚式に臨んでる夢を見て、

「何年か後には、夢が現実になったらいいな」

と思いながら目が覚めた。温也に

「あっくんおはよー。起きたかえ?」

とラインを送ったが、まだ既読が着かない。朝6時、まだ温也は寝ていると思った郷子はライン電話をかけて

「ふぁーい。もひもひ?郷子ちゅあーん?ふにゅ~眠たいぞ~。あと5分寝かせてぇ…」

と電話に出たので、

「こら~温也~おきんかい~」

と喝を入れてやると

「ふぇ?今何時?」

とまだ半分寝ぼけた様子だったので、

「もう6時過ぎたよ。起きんと学校遅れるぞ~」

そういうと、

「ゲッ。もうこんな時間。起きるべェ~」

そう、コンクールに向けて、温也と学校で楽譜を見ながらのイメージトレーニングをしようって話になって、早目に学校に行こうと話していたので、なるべく早く起きてゆっくりと学校に行きたい郷子は、まだ寝坊助な温也に喝を入れたのであるが、温也が話していた、旅行作家になるには、決められた鉄道の時刻に合わせて行動できるようにしておかないと、後々困ると思って、郷子も朝6時に起きて、余裕を持った行動ができるようにと考えてのことだった。郷子はいつも6時に起きていたのであるが、温也は7時ごろに起きているので、何かとバタバタしているって、母親の瑞穂から聞いたことがあったので、今のうちにきちんと朝早く起きれるように習慣づけておかないとって思ったのであった。

 やがて、7時半を過ぎて朝食や着替えも済ませて、

「あっくん、学校の用意はできた?」

とラインを送ると、

「準備万端。今から郷子のところに行くわ」

と連絡が入った。

「ラジャリンコ~。待ってるからね」

しばらくして、玄関のベルが鳴って、桜が

「温也君おはよう。練習頑張ってね」

「おはようございます」

と挨拶をすると、郷子が

「あっくんおはよう。本当に寝坊助なんじゃからもう😡」

「郷子おはよう。おっし。今日からまた勉強と練習頑張るべェ」

そこへ、ひろ君がやってきて、

「おはようございます。泉ちゃん迎えに来たんですけど、もう出られそうですか?」

「泉?多分もうすぐ出てくると思うけど、呼んでこようか?」

「いいえ。ここで待っておきます」

やがて、泉が

「ひろ君お待たせぇ。一緒に学校に行こう」

「泉ちゃんおはよう。じゃあ、僕たちも行ってきます」

「ほーい。チャリンコとか車には気をつけるんやで~」

「はい。大丈夫です」

二人歩きながら

「昨夜ねぇ、私あっくんと結婚式でウェディングドレス着て、あっくんとバージンロード歩いてる夢見た。いつか現実になったらいいなって。そう思ったよ」

「夢は見るものじゃなくて、実現させるもの。10年後には夫婦になろうぜ」

「そうじゃね。夢は実現させるものかぁ。私はどんなお嫁さんになってるのかなぁ?」

「きっときれいな花嫁になってるんじゃない?世界で一番きれいな」

「そうなれるように私も自分磨きしないとね」

「俺ももっと自分を高めていかんとねぇ」

やがて、学校に着いて、いつもの教室のいつもの席について、普段の授業が始まった。理科では温也の得意分野の地学の授業が始まった。能登半島で起きた地震についても学んだ。そして地震が発生するメカニズムも。郷子が少しわからないなぁって感じだったので、

「郷子、さっきの授業解った?」

「うーん。断層のずれで地震が起きるって言うのはわかるんじゃけど、正断層と逆断層って言うのがいまいちよくわからんのよねぇ」

「正断層って言うのは、プレートとの境界で、地面が隆起する断層。逆断層って言うのは、元の地面よりも下降する断層で、阪神淡路大震災とか、中越地震とかは正断層。つまり、元の高さの地面よりも、断層面を境に隆起した地震やったんよね。あと能登半島地震でも、能登半島沖の陸地にすぐ近いところで、海底が隆起して、港湾施設が使えなくなって、船舶による救助活動や、復旧作業が困難になってしまったのが、復旧の大きな妨げになってるって言ってたよ。大型船が入港できんようになったからね」

「ふーんそうかぁ」

「また詳しく教えてあげる」

「頼んます」

やがてお昼休み。郷子と温也が二人でお弁当を食べていると、トシと藍ちゃんがやってきて、二人を手招きして廊下に出て

「あのさぁ、俺たち付き合おうってことになってね。温也と郷子ちゃんには伝えておこうと思ってね」

「やっぱりそうなんじゃねぇ。昨日ミラスタで見かけたとき、すごい中よさそうに見えたからね。二人も付き合えたらいいのにねってあっくんと話してたの。藍ちゃんよかったじゃん。トシ君もなかなかいいヤツやからね。トシ君、藍ちゃんのこと守ってあげてね」

「任せときなはれ」

「でも、郷子にちょっと聞きたいんじゃけどねぇ。付き合うって具体的にどんな事すればいいの?」

「私?私はねぇ。特別なことはしてないよ。普通に接してるっていうか、あっくんとは話してるからね。でもお互いに相手のことを大切に思うってことは大切。それから一緒にいられる時間を大切にするってことくらいかなぁ」

「そうそう。変に意識すると固くなってしまうからね。いつも通りフランクな付き合いでいいんじゃない?」

「ふーん、そんなものなん?」

「そう。それでお互い好きなことを一緒にできる時間を見つけるとか、楽しめることをするとかね」

「わかった。ありがとうね」

そう言って、二人は廊下に出ていった。

 やがて、放課後になって、部活動の時間。だんだん暑くなってきて、部室に入ると、ゴールデンウィークの間はずっと鍵が閉まったままだったので、ムワーッとした空気が一気に流れ込んできたが、部室の窓という窓を全部開け放って、新鮮な空気と入れ替えて、まずは部室に溜まった埃などの掃除をした後、楽器を取り出して、まずはスライドグリスをスライド管に塗って、オイルを部品に塗って各パーツがきちんと動くか確認して、息を吹き込んでスライドの動きを確認。マウスピースを口に当ててまずは基本練習からスタート。4日間ほど吹かなかった割にはきれいな音が出た。そしてパートごとの練習・そして、金管楽器と木管楽器に別れての練習・それから全体練習へと進んで、威風堂々もなかなかいい具合に仕上がっていた。上山先生も

「なかなかよくまとまってるじゃない。このまま練習頑張っていきましょう」

そう言っていた。

 部活動を終えて二人で帰宅していると、泉とひろ君と津留美が公園でバドミントンをしていた。なんでも、バドミントン部は、まだ連休が明けて初日なので、あまりハードな練習はせずに基本練習だけして今日は解散となったという。3人を見つけて

「泉~。今帰ったぞ。ひろ君とつるちゃんとバドミントンかぁ。いくら運動神経のいい泉も、なかなか苦戦してるんじゃないか?」

「お兄ちゃんおかえり。やっぱり津留美さんとかひろ君はシャトルを毎日追いかけてるから、めっちゃ上手いわ」

「でもねぇ、泉ちゃんなかなか素質あるよ。中学に入ったらバドミントン部に入ってほしいわ」

「そうなんじゃねぇ。でも、あまり遅くならんうちに帰らんとね。それじゃあ、私たちは帰るね」

「郷子さんバイバーイ」

「バイバイ」

家に帰ると、今日は泊まりで運転業務に就いていた光が帰宅していて、瑞穂と一緒に夕食の準備をしていた。

「郷子、また明日ねぇ」

「うん。明日はきちんと起きんとほっていくからね」

「ほーい。明日も郷子のラブコールで起きよっと」

「もう、そんなこと言ってたら本当にほったらかしていくからね」

「冗談。じゃあね」

玄関先で別れて、郷子も家に入っていった。

「ただいまぁ。ウーンうまそうなにおい。腹減った~青春はおなかがすくのである~」

「お帰り~」

それから夕食を家族そろって食べて、温也は成長期であり、泉も運動女子であるため、まぁ、よく食べる。

「もう、二人ともよく食べるわねぇ。それだけ食べたら、将来郷子さんもひろ君も「食費がかかるって」悲鳴上げるんじゃない?」

「お兄ちゃん、すごいよく食べるもんね。これでどんぶり茶わん2杯目?」

「そう言う泉だって、食欲旺盛じゃん。まぁ、運動してるからしっかり食べんとな」

そんなこんなで食事が終わて、風呂に入って郷子とライン。

「今日は練習再開初日にしては、よく音が出てたよね。ちょっと音が外れるかな?とか思ってたけど、思ったよりも俺、音がよく伸びてたわ」

「私も。まずは最初の入り方が心配じゃったけど、あれくらい音が出せたらいいところに行けるんじゃない?」

「そうやね。あとは今の状態が続けられるようにせんとね」

「あと2か月半ほどじゃね。金賞とれるようにガンバロー💪」

「おいおい。ポパイじゃないんじゃから」

「さてと、それじゃあ今から私はお風呂に入ってくるね。エッチなこと想像せんのよ( ̄▽ ̄)」

「はいはい。でも、あと10年あとくらいには、夫婦になって一緒にお風呂に入ってるかもよ~♨い~ひっひっひ~」

「もう、変態・エッチ・スケベ」

「ムフフ~」

そう言ってお風呂に向かった郷子である

「あと10年ぐらい後かぁ。私とあっくんの間には子供がいたりしてねぇ…。私とあっくんの子供ってどんな感じなんやろう?きっとかわいいんやろうねぇ」

そんなことを考えながら入浴を済ませて、セミロングの髪の毛を乾かして、ベッドに寝転んでいたら、いつの間にか寝息を立てて眠っていた郷子であった。温也も今朝郷子が話していた、二人でバージンロードを歩いている夢を見たっていうことを思い出して、郷子との将来を思い描いていた。二人であちこち旅をして、いろんなものを見て、紀行作家として独立出来ていたらいいなっていう思いを抱いていた。そのために、ウェブで出版社のホームページを見て、どのような文章の組み立てをしているのか、あるいは写真を構図や構成などを頭の中に叩き込みながら、自分が紀行作家として執筆するときはどのようにするのかをあれこれ考えながら読んでいた。そして、郷子と二人でその夢を実現させたいと思った温也であった。自然や地質学・歴史的建造物や伝統産業や風習なども取り入れたいし、郷子はサッカーをはじめとするスポーツ観戦が好きであるし、泉はスポーツをすることが好きなので、鉄道や車であちこちでかけて、それらをうまく組み合わせ出来たらいいだろうなって思いながら眠りについた。

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