第9話大阪2日目
郷子たちが大阪について、2日目の朝を迎えた。2日目は郷子の祖父母が入っている高齢者施設に、大きくなった自分自身の姿を見せに行くことになっていて、そのあとは高野山に行くことになっている。
朝起きて、温也へのラインで、
「今日は私のおじいちゃんとおばあちゃんに会いに行くよ。それからそのあとは高野山に行くからねぇ」
と知らせて、温也からは
「そうかぁ。気をつけて行くんだぞ~。高野山かぁ。俺も行ってみたいなぁ。小学校の林間学校で行ったきりやからなぁ」
「ほーい。またついたらラインするね~」
叔父の運転する車で祖父母の入所している高齢者施設に行って、着いたら桜が
「すいません。先ほど連絡した名村ですけど」
しばらくするとガチャリと鍵が開いて、施設の職員が顔を出して
「はい。あ、名村さんですね。しばらくお待ちくださいね」
そして、郷子の祖父母の名村道夫・梅が車いすを職員に押されてやってきた。
「おじいちゃん、おばあちゃん久しぶり。元気にしてた?」
「あぁ、郷子か。久しぶりやねぇ。ごっつい背が伸びたなぁ」
「本当ねぇ。孫がこんなに大きくなって。私は元気に過ごしてるで」
郷子の祖父母は、車の運転中に交通事故に巻き込まれて、脚が悪くなってしまって、二人で入所して今に至るのであるが、郷子は車いすに乗っているとはいえ、比較的元気そうに過ごしているのを見て、安堵した。
「郷子は今中学でどんなことしてるんや?」
「私は中学校では吹奏楽部に入ってるよ。トロンボーンていう楽器を担当してる」
「そうかぁ。郷子は昔から音楽が好きやったからねぇ」
「お義父さんとお母さんは施設で今何やってんのですか?」
「俺らは二人で詩を詠んだり、カラオケやったりしてるよ」
「お爺さんは昔の昭和40年代とか、50年代の曲をよく歌ってるわ」
「昭和の時代って、俺らもあまり覚えてない頃やからなぁ」
「そんな昔の話なん?」
「そりゃそうよ。西暦で言ったら1970年代とか80年代前半やからねぇ。今から40年とか50年も昔の話やからね」
「郷子なんか、まだ種にもなってない頃の話や」
「まぁ、私が産まれたのが2010年の5月6日やからねぇ」
「あ、そうじゃ。郷子、郷子の彼氏の写真見せてあげなさいよ」
「郷子の彼氏?ほぉ、かっこいい男がおるんか」
「そう。私のクラスの男の子で、湯田温也君。私と同じ吹奏楽部に入ってるよ」
「ほぉ、なかなか結構かっこいい男の子じゃない」
「あっくんはすごくまじめで、私のこともいろいろと気遣ってくれるよ。彼ねぇ、この3月末まで大阪府の高石市に住んでたんじゃって」
「そうかぁ。郷子も大事にしなさいよ」
温也の話と昔の話に花を咲かせて、祖父母の様子を見て少し安心した郷子たちであった。
郷子は温也に祖父母の写真をラインで送った。
「私のおじいちゃんとおばあちゃん。かわいい顔してるじゃろ?」
「へぇ、結構若い感じのするおじいちゃんとおばあちゃんやねぇ」
「そう。おじいちゃんとおばあちゃんは交通事故に遭ってね、脚が不自由になって、二人で高齢者施設入ってるの。私の大好きなおじいちゃんとおばあちゃんよ」
「どことなく郷子にやっぱり似てるかなぁ」
「そう思う?このあとね、電車に乗って高野山に行くの。南海電車の特急こうやに乗るから、またライン送ろうか?」
「うん。頼むわ」
そして、河内長野駅に行って特急こうやの入線を待つ。待っている間に近鉄長野線の車両を写したり、難波駅や橋本駅に向かう通勤型車両の電車を写したりして、やがてこうやが駅に到着。伯父が
「郷子はいつから鉄道大好き人間になったんや?」
「あぁ、あっくんがねぇ電車大好きやから、写真送ったら喜ぶなって思ってね」
「そうかぁ。郷子もそのうち鉄道大好き人間になるんやないか?」
「まぁ、それはどうやろねぇ?」
そんなことを言いながら、車内に乗り込んで、座席に座る。ここから特急に乗ればおよそ1時間で極楽橋駅に着いて、ここからケーブルカーに乗り換えて高野山駅に着く。橋本駅までは難波方面への通勤圏内に入っていて、通勤電車も数多く乗り入れているが、橋本駅から先は急勾配に急カーブが続く山岳路線となり、特急こうやに使われている30000系は、平坦区間を走る高速性能と、山岳区間に乗り入れると班性能を併せ持った車両であり、急カーブ区間に対応するため、一般車両よりも短い17mで、急勾配に対応する各種機器も搭載されている。その特急に乗って都市近郊の風景から、橋本を出ると一気に山岳風景になって、車体をきしませながら険しい道のりを進んでいく。やがて、極楽橋駅到着のアナウンスが流れて、ケーブルカーへの乗り換え案内が放送されて、高野山駅に到着して、赤松院や金剛峯寺などを見て回った。弘法大師が開創した仏教の地とし世界遺産の登録も実現して、数多くの観光客が訪れていて、郷子も初めて見る高野山の風景を堪能した。金剛峰寺をゆっくり見て回ると、結構時間が過ぎてしまっていて、あちこち写真を写しながら、高野山駅に帰ってきたところで、温也に高野線の車両を写した写真をラインで送った。
「あっくん、今ね高野山駅に帰ってきたところ。赤松院とか金剛峰寺とか行ったよ。それから電車の写真送るね」
「おぉ。さんきゅ。よく撮れてんじゃん。こうや、めっちゃ懐かしいわ」
「今からケーブルカーに乗って帰るからねぇ」
ケーブルカーに乗って極楽橋駅に戻って、今度は特急ではなくて、各駅停車に乗って橋本駅に出て、橋本駅で乗り換えて、河内長野駅まで戻って伯父の家に帰宅。帰宅したのが夕方だったので、夕食を外に食べに行って、家に帰った頃には暗くなっていた。家に着いてラインで、明日の新山口駅に着く時刻を温也に知らせた。
「明日はね、18時23分に着くさくら563号に乗って新山口に着くからね」
「わかった。迎えに行くわ」
「ねぇ、会えなくて寂しかった?」
「まぁねぇ。郷子と知り合ってから初めて3日間顔を見ないのは初めてやからなぁ。なんか、そばにいてくれるのが当たり前になってたっていうか、やっぱり俺は郷子が好きなんやなって思う」
「私も。やっぱり会いたいなって。伯父ちゃんと伯母ちゃんに、おじいちゃんおばあちゃんにも会いたかったけどね。いつかあっくんと一緒に来たいなって」
「早く会いたいなぁ。明日帰るのも気をつけて帰れよ。また大阪はどんなんやったか、詳しく教えてね。そう言えば郷子の誕生日っていつなん?聞いてなかったなって思って」
「私は5月6日よ。あぁあ、当日まで秘密にしておきたかったんやけどねぇ。ばれちゃった」
「そうかぁ。それじゃあ誕生日のお祝いしないとな」
「まぁ、一つ歳をとって、少し大人になるんかもねぇ。あっくんの誕生日はいつなん?」
「俺は2月17日や。やから、郷子の方が9か月ちょっとお姉さんになるんやな」
「じゃあ、あっくんの時もお祝いしないとね」
誕生日の話を聞かれて、改めて温也のことが大好きだって思う郷子なのであった。
それから夜は早く寝て、明日は昼までゆっくり過ごして、15時過ぎに河内長野駅を出る電車に乗って伯父の家を離れることになる。明日は温也に会える。そう思うと少し寂しいような嬉しいような感情が複雑に入り混じった夜を過ごして、眠りについた。
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