第5話ゴールデンウィークの予定

 サッカー観戦が終わってゴールデンウィークの予定を立てていた温也。

「せっかく山口に引っ越したんやし、どこか列車写しに行くかなぁ?」

そういろいろと考えていたのであるが、やはり山口と言えばSLは外せないだろう思って、運行日を調べて、5月3日にしようかと考えていた。登校日の連休の谷間は部活があるし、前半の土日は祖父母の家に行くことになっていたので、その予定で郷子にラインを送ってみた。

「今度の5月3日にSL写しに行こうと思うとるんやけど、郷子は何か予定ある?」

しばらくして恭子からラインが返ってきた。

「3日は今のところ特に予定はないよ。どこに写しに行くん?」

「そうやねぇ。篠目駅のあたりに行こうかと思うてるよ。山口線に乗って篠目まで行って、津和野行のSLを写そうと思う。確か、給水塔が残ってるから、それと絡めて写しに行こうと思う」

「わかった。また何時ごろ家を出るか教えてねぇ~」

そんなやり取りをして、翌日。

「お兄ちゃん、オハヨー。早く起きんと遅刻するで~」

泉からたたき起こされて時計を見ると、7時前。

「ゲッ。やべぇ~。寝過ごした」

「もうお兄ちゃん、郷子さんのことばかり考えすぎて寝ぼけてんじゃない?本当熱いわ~。やけどしそう(笑)」

「グーッ、なんも言い返せん」

「温也、早く朝食食べてしまいなさい」

「相変わらず落ち着きがないやっちゃなぁ。そんなんで郷子さんとのデート大丈夫かぁ?」

「もう、皆で俺をからかうなっちゅうねん」

そしてそそくさと朝食を済ませて、制服に着替えて学校に行く準備をして、玄関を出ると、泉のクラスメイトの男の子が来ていた。

「泉ちゃーんおはよー。」

「あぁ、宇宙君おはよう。今日の体育、体力測定やけどひろ君はどんな感じ?」

「うん、俺はバッチしじゃあ」

「そっかー。ひろ君足速いからねぇ」

「おぉ。泉のクラスメイトかぁ?」

「そう、同じクラスの仁保 宇宙(にほ ひろし)君」

「仁保?あれ、ひょっとして、お姉ちゃんおる?」

「はい、第一中で2年生で、バドミントンやってます」

「やっぱりなぁ。俺のクラスにも仁保っていう苗字の女子がおるから、ひょっとしたらって思ったけど。宇宙君もバドミントンやってんの?」

そこへ郷子もやってきて、

「皆さんおぱよー。ファー。眠いよー。月曜日ってかったるいねぇ…」

「なんだよそのおぱよーって。寝不足なんか?寝不足は体に良くないぞー」

「違うってばぁ。ちょっと眠れんかっただけじゃ」

「そうそう、それで、宇宙君はバドミントンやってるん?」

「はい。やってますよ。夢は姉と二人でオリンピックに出ることです」

「ほぉ。頑張れ~」

「ひろくんもバドミントン上手いもんねぇ」

そして、泉たちとは小学校の校門前で別れて、郷子と二人で学校へ。

「そうそう、私たちね、今度の27日から29日まで、河内長野のおばの家に行くことになったの。めっちゃ久しぶりに会えるから楽しみ」

「そうなんかぁ。じゃあ、連休の前半は会えんのかぁ」

「なに?ちょっと寂しい?」

にやりと郷子がいたずらっぽく笑う。

「そりゃあねぇ。やっぱり近くにいてほしいって思いはあるなぁ」

「そうかそうか。帰ったらいの一番に会いに来てあげる」

学校に着くと、津留美と一緒になった。

「つるちゃーん。今日はひろ君と一緒に途中まできたんよ。ちょっと背が伸びたみたいやねぇ」

「そうなそ。そのうち私の身長追い越すじゃろうなぁ」

「二人でオリンピック出場が夢なんやってなぁ。2032年のブリスベーン大会なら実現できるかもしれんなぁ」

「まぁ、実現できるかどうかわからんけどね」

「夢は実現させるためにあるもの。夢をかなえようと思ったら、それに向けて今自分がやらにゃーならんこともはっきり見えてくるからね。頑張れ~」

「おやぁ?あっくん、妙にかっこいいこと言うじゃん。さては二人で何か実現させてみたい夢ってあるん?」

「まぁな。それは今は秘密やけどなぁ」

「え?なになに?あっくん教えてよ」

郷子がせっつくが

「だから秘密。俺がもっと大人になったら、郷子には教えてあげる」

「うんも~。今教えてくれたっていいじゃん」

なんてことをわちゃわちゃ言いながら教室へ。歳也も入ってきて、

「おーい温也~。今年のタイガース、どうしたん?なんかあまりヒットが打ててないみたいじゃけど」

「そうなんよ~。今はピッチャーが抑えてるけどな、打撃陣がどうも開幕からあんまり打ててへんのや~。どうしたんやろ?」

「そうやろ?ちょっと打率が上がってこんよなぁ」

「せやから、トシにはタイガースに入って、打撃の中心選手になってくれっていうてんねん」

「まぁ、俺がプロに入れるようになるんは、あと最低でも4年先やけどなぁ。まぁ、期待しちょってちょ」

彼は今、内野の守備の練習をしていて、主なポジションはファーストとセカンド。打順は7番から8番を任されることが多いが、打撃そのものは鋭い当たりをかっ飛ばしていて、打率も悪くないが、まだ守備の確実性に欠けるということで、内野の練習を行っているそうである。


そうして、授業が終わって吹奏楽部の部室へ。二人そろって楽器ケースからトロンボーンを取り出して、まずは音出し。

「あっくん、ちょっと音が高いかなぁ。チューニング合わせるよ」

「ほーい」

で、音出ししてみると、やはり少し高め。チューニングを合わせたら、今度はパート練習。吹奏楽部でトロンボーンは後輩の長門峡子(ながと きょうこ)と篠田隆(しのだ たかし)の合わせて4人。楽曲によって1st~3thまで交替し、IN THE MOODでは温也と郷子がファースト、長門峡子(ながちゃん)がセカンド、隆(たかやん)がサードを担当している。そして、管楽器ではトランペットが4人・ホルンが3人・ユーホニウムが3人・チューバが2人、木管楽器ではフルートが4人・クラリネットが5人・サックスが4人と言う陣容である。

 この日もIN THE MOODの陽気で軽快なリズムにノリノリで演奏して、だいぶ全体で会わせてもしっくりいく演奏ができるようになっていた。

「そう言えば、夏休みのコンクール、どんな曲になるんやろか?」

「あ、そっかぁ。そろそろコンクールの曲も決めんといけんころよねぇ。私はペールギュントの組曲「朝」がいいなぁ。夏の朝ってすがすがしくて気持ちいいじゃん」

「俺も好きだなぁ。夜が少しずつ明けていく感じがして、今日もがんばろーって思えるもんなぁ」

「一応上山先生にリクエスト出しとく?」

「そうやねぇ。あと第二希望でボレロ。あれもノリがいいし、俺個人的には好きな曲なんよねぇ」

「私は第二希望は、ドヴォルザークの新世界交響曲第9番第2楽章もいいなって思う。なんか一日の疲れを洗い流してくれるような、そんな気がするんよね」

「そっかぁ。まぁ明日先生に進言してみよっか」

「うん」

「それじゃあ、また明日な」

「ほーい。また後でラインしよ」

「OK」

そしてそれぞれ家の中に入っていった。

「お兄ちゃんおかえり~。お母さんもお父さんもまだ帰ってないから、私が少し晩御飯作っておいたから」

「ほぉ~泉も早くも花嫁修業か?」

「違うわ‼‼なんで花嫁修業なのよ」

「だって、今朝ひろ君となんかいい感じやったやん」

「ち ちち 違うわよ。私とひろ君はそんな感じじゃないもん」

「ほぉ?なんか顔が真っ赤になってるぞー。イヒヒヒ~😀」

「もう、お兄ちゃんきらーい」

「でも、いいんじゃね。早くから好きな人がいるってのは。俺も泉には早く素敵な人と出会えるようにって思ってるぞー」

「からかうなぁ~」

と、泉をからかって、さっそく洗濯物を出して洗濯機を回して、風呂掃除を済ませてて、少ししたら瑞穂が帰ってきた。

「ただいまぁ。はぁ。残業で遅くなっちゃったわよ~。泉~。晩御飯の手伝い有難うねぇ」

「はーい。ハンバーグ作っといたよ~」

「サンキュ。あとは私がポテサラ作るわ。お父さんは今日は職場の歓迎会で遅くなるからって言ってたから、先に食べちゃいましょ。温也、洗濯物取り込んでくれた?」

「やっといたで~。風呂洗いも終わったよ」

「サンキュ」

「そう言えばお父さんは明後日から運転業務に入るんだっけ?今度写真写すのに、どこかおすすめのところがあったら教えてもらおっと」

そうして夕食を言済ませて、夜、郷子とラインで、SLを写しに行く計画を話した

「5月3日はね、9時50分に矢原駅を出発する列車に乗って、山口駅で乗り換えて、10時44分に篠目駅に着く列車に乗るから。帰りは12時58分に篠目駅を出る列車に乗って、山口駅で乗り換えて、矢原駅に13時59分に着く列車に乗るから」

「わかった。お昼ご飯はどうする?篠目駅の周辺じゃあ、お昼食べられるようなお店はないよ?」

「この前郷子に作ってもらった焼きサンド、あれめっちゃ美味かったからなぁ。また何か作ってもらってもいい?」

「いいよ~。それじゃあ、あっくん関西風のお好み焼き好きよね?私も大阪に親せきがおるから、お好み焼きは関西風をよく食べるんやけど、お好み焼き作って持っていこうか」

「おぉ。ありがとう~。楽しみにしてるわ。それと、今度の休みに山口市内案内してくんない?いろいろと市内の名所見て回りたくて」

「わかった」

「じゃあ決まり。ガイドたのんまっせ~」

「任せて頂戴」

「それじゃあお休み~」


そして、4月19日の土曜日を迎えたのであった。






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