第3話一緒に登校
翌日、郷子が温也を迎えにやってきた。
「湯田くーん。おはよう」
「あぁ。上田さんおはよう。もう行くの?」
「そう、早く行って、読書したいの」
「わかった。ちょっと待ってて」
「ほーい」
温也が準備を整えて、二人で登校。校門近くに差し掛かると、クラスメイトの仁保 津留美(にほ つるみ)と、太田 歳也(おおた としなり)や矢場 藍(やば らん)と言った面々と一緒になった。
「郷子おはよー」
「つるちゃんおは~。眠いねぇ。早く今日の授業終わんないかなぁ。とし君は野球好きじゃから、湯田君と話が合うかもしれんねぇ?」
「いやぁ。俺は野球すきやけど、もっとうまくならないと、高校は行ったらきついかなぁ。できれば甲子園にも行ってみたいんやけどねぇ」
「えっと…。太田君やったかいな?野球好きなんやぁ。将来はプロ野球選手に入って、タイガースの主力になってくれへんかなぁ」
「いやまぁ、それは叶うかどうか分からんけどねぇ。タイガースかぁ。じっくり考えるわ😀。」
「らんちゃんはバレー部なんよねぇ」
「そう、私のこの長身を生かしてのバックアタックが決まったらめっちゃ気持ちいいよ。私は将来は実業団に入って、オリンピック代表になれたらいいなぁって。今年のパリオリンピック、応援するの楽しみ~💛」
「仁保さんは何部なん?」
「私はバドミントン部。年がら年中シャトル追いかけまわしてるよ」
「つるちゃん、めっちゃ反射神経いいもんねぇ」
そんな他愛のない話をしながら、教室に入って、荷物を机の中にしまい込んで、ホームルームまでの時間、思い思いに過ごして、ホームルーム開始5分前の予鈴が鳴る。
「そう言えば湯田君は部活何にするか決めた?」
「うーん。まだ決めてないんよねぇ。上田さんは何部に入ってんの?」
「私は吹奏楽部なんよ。トロンボーン担当よ。これから夏休みに向けて、県のコンクールがあるから、それに向けた練習が始まると思うよ。湯田君は前の学校では何に入ってたん?」
「俺も吹奏楽やってたんや。同じトロンボーン担当やったよ。上田さんが吹奏楽部なんやったら、俺も吹奏楽部にしようかなぁ」
「え?本当?マジで?じゃあ、一緒に吹奏楽やろうよ」
「今日練習あるん?練習あるんやったら、見学に行こうと思うんやけど」
「多分見学大丈夫やと思う。顧問の上山先生に伝えておくわ。それと、今度の14日の昼間ってなんか用事ある?もし予定が入ってないんじゃったら、一緒にサッカー観戦に行かん?」
「14日かぁ、たぶん予定は入ってなかったと思うよ。俺もスポーツ観戦好きやし、一緒に行ってもいいの?」
「うん。大丈夫。今日帰ったらうちの両親には話しておくね」
「わかった~」
そしてその日の授業が終わって、放課後。温也は郷子に連れられて、吹奏楽部の練習の見学に行った。温也は見学ということで、その日は楽器を使っての練習とかはなかったが、郷子たち演奏する楽曲を聞いていて、やはり自分も演奏してみたいという思いにかられていた。この日演奏していたのは、アメリカ第二の国歌ともいわれる、ジャズの名曲であるIN THE MOOD。あの軽快なリズムを聴いていると、自然と心と体が弾む。特に最後の見せ場が決まるとめっちゃかっこいいのである。
その日の練習が終わった後、顧問の上山先生から
「湯田君、どうか吹奏楽部に入ってくれない?夏休みのコンクール、一緒に出てみない?」
「はい、俺、ぜひ入りたい思うてます。宜しくお願いします」
そんなこんなで、温也の吹奏楽部入部が決まった。
帰り道、郷子と温也は一緒に帰った。
朝一緒になった歳也と藍と津留美も部活が終わって帰るところで、3人そろって
「おや~。お二人さん、一緒に帰るの~?仲がよろしいようで~」
「もう、冷やかさないでよ~」
「おや?湯田君顔が赤くなってる~」
「そ、そんなんやないし~」
なんてからかわれながら、二人そろって家の前まで帰って、お互いそれぞれの家に向かう。玄関に入りかけて、温也が郷子に
「なんか湯田君と呼ばれるの、あんまりしっくりこないんだよなぁ。前、大阪に住んでた時からずっと、温也とか、あっくんやったから、温也か、あっくんって呼んでくれたらいいかな」
「そうなん、じゃあ、そう呼ばせてもらうね。私のことは、郷子とか、きょうちゃんって呼んでくれたらいいから。あ、それからライン交換してもいい?」
「いいよ。じゃあ、ライン交換と。あと、スマホの番号教えておくわ」
そうして、ライン交換と番号を教えて、家の中へ
「それじゃ郷子ちゃん、また明日ね」
「あっくんまたねぇ」
そう言って、家の中に入って、温也は瑞穂に
「俺、こっちでも吹奏楽やるわ」
「そうなん?まぁ、頑張りなさいよ」
「うん、またこっちでもコンクールで金賞とれるように頑張るわ」
瑞穂も吹奏楽経験者なので、温也の吹奏楽の活動をずっと応援してくれていた。
その一方、光は今日も乗務訓練があって、山陽本線で実際に運転席に乗り込んで、路線の状況や、速度制限などを確認しながら、その日を終えて帰宅してきた。まだまだ覚えなくてはならないことがたくさんあって、大変だと言っていたが、大阪近郊区間とは違った景色も見られるので、楽しみだと言っていた。
郷子の家では桜と望に、郷子が
「14日、レノファの試合観に行ってもいい?湯田君も行ってみたいって言ってたから、一緒に行こうと思うんじゃけど」
「じゃあ、お昼ご飯どうする?」
「私が焼きサンド作って持っていくから」
「まぁ、湯田君なら、問題ないと思うけど、お父さんと一緒に行ってみて、お父さんが安心して任せてもいいって思えたら、その次試合観に行くとき、二人で行くことにした方がいいんじゃない?」
「じゃあ、俺も一緒について行くから。それで、俺が大丈夫って思ったら、OKするようにしようと思う」
「まぁ、仕方がないかなぁ…。」
ちょっと郷子は不満げな顔をしていたが、まだ未成年であるため、親の言うことももっともだと思ったので、その夜、温也にラインで、
「14日はね、お父さんも一緒について行くことになったから。お父さんから見て、二人で言っても大丈夫って思えたら、この次からは二人で行ってもいいって」
「わかった。俺の両親にも伝えておくよ。連絡ありがとうね。かっこいい温也より☻⚽」
「何?最後のかっこいい温也よりって(笑)。」
「いやいや~。俺ってかっこいいだろう?なんてね。お休み~」
「お休み~」
「あ、それから、私のことは郷子って呼んでくれたら嬉しいな」
「いいの?それじゃあ、これからは郷子って呼ぶね」
そうラインを送って、その夜は更けていった。
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