第6話

動揺していた襲撃者たちは、胴体を両断した攻撃が一向に来ないことに困惑していた。

とはいえ、触手触腕は『素材』を捕えようと食らいついて来るため、立ち止まる訳にはいかなかった。

とにかく進もうと、全員が動き出した時、『屋敷』の一部が爆発した。

誰が? とか、侵入できたのか、とか、考えるよりも前に、この場にいる全員が思った。


——チャンスだ!!!!!!


ほぼ同時に四千人の襲撃者たちは走り出す。

気持ちは一つだった。


——『装飾卿』をぶっ殺す!!!!


襲撃者たち全員が、殺意のこもった良い笑顔だった。



俺が『個人部屋』で蘇生し起きて、西にスポーンすると、そこは惨状だった。

西側のここは平らな岩場があるだけだったが、今は大きなクレーターが出来ていた。


「何があったんだ?」


俺は近くに居た人に聞いた。

その人によると、『屋敷』で小さな爆発があって、触手触腕の動きが止まり、仲間が突撃したら、大爆発が起きた。らしい。

『屋敷』はクレーターの中心にあった。

そして、全くの無傷だった。

損傷を修復するにも、爆発を起こすにも、攻撃するにも、『装飾卿』は呪力を消費するはず。

結構削ったはずだけど、どこから呪力を持ってきているんだ?


負感情を魔法や魔術などの燃料に変えたもののことを呪力と呼ぶ。

呪力を使えば使うほど、負感情が一時的ではあるが麻痺してしまい呪力を生み出すことができなくなる。

故に、『装飾卿』は他人を素材にし、意識や感覚を残したままインテリアに作り変え、負感情を抱かせそれを己に集めることで、膨大な呪力を得ていると推測されている。


『装飾卿』は自前の呪力でこれができると言うことか?

『生きたインテリア』の大部分は壊したはず。

貯蓄を切り崩すか、自前のものを使うか、もしくはまだ多くの『インテリア』を隠しているのか?

いや、俺が考えるべきはそこじゃない。

なぜ力を求めるのか、それを考えなければならない。

半径五キロメートルのクレーター。深さは約一キロメートル。

別の場所ならいざ知らず、人物にせよ、兵器にせよ、西側の岩場でこれを作れるものはないだろう。

余波だけで、周囲一キロを焼き溶かした超高出力ビームキャノンの直撃ですら、多少融解するだけだったのだ。

今はどうかわからないが、当時の技術の粋を集めた兵器だった。結果が全然だったので、俺は膝から崩れ落ちたし、みんなはガックリと倒れていたことを覚えている。

それが、そんな無敵の場所が、大きく抉れていた。

どうすればこうなるのか、わからない。

そして、ここまでの力を持っていながらさらに力を集める理由も、俺にはさっぱりわからなかった。

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