第4話
襲撃者を飲み込んだ触手触腕は、捕らえた素材を『装飾卿』まで運ぶために引っ込んでいく。
しかし、襲撃者は即座に自爆する。
口の中に隠していた、小型ではあるが上半身が無くなる程に火力の高い爆弾を噛み砕いて起爆する。
触手触腕は、爆ぜて花の部分がバラバラになり、力尽きたわけではないだろうがぐったりとしていた。
襲撃者たちは、触手触腕に囚われた状態で移動する訳にはいかなかった。
なぜなら『装飾卿』の元へ移動する途中で、インゴットのような箱型に加工され、ただの素材として『装飾卿』の目の前に並べられるからだ。
襲撃者たちにとって、ここまではいつも通りだった。
しかし『装飾卿』にとって、この襲撃イベントが素材大量獲得のチャンスであると同時に、煩わしいことに『屋敷』喪失の危機でもあった。
一本の新たな触手触腕が、伸びてくる。
しかし、それは襲撃者には向かわず、先端を高所へと伸ばし、そこで花開く。
襲撃者の大半が嫌な予感がした。
開いた花は、見下すように大口を襲撃者へと向けた。
そして、花の中心に光が灯る。
「避けろッ!!!!」
誰かが言った。
素早い警告だった。
しかし、遅かった。
「新兵器か……!」
その花に近かった約五百人。
その全身が一瞬にして、焼けていた。
体表のほとんどが黒くなり、一部はぼろぼろと崩れている。
しかし、死んでいない。
瀕死ではあるが、死んでいない。
ぐったりしていた触手触腕たちが起き上がり、焼けた襲撃者に大口を開ける。
『装飾卿』にとって、『素材』の良し悪しはどうでもよかった。
欲しいのは『生きた素材』。
『生きて』いればそれでよかった。
故に、ようやく完成に至った『砲型フラワースネーク』を導入することに躊躇いはなかった。
『素材』を殺すかもしれないし、死ななかったとしても瀕死になっているだろう。
しかし、どうでもよかった。
瀕死だとしても、『生きて』いるし、行動が不能になっていれば、それでよかった。
そうなっていれば、『生きた素材』を取り放題だから。
「死ねやッ!!!!」
二丁の小型ガトリング銃を持った一人の襲撃者が、撃ちながら叫ぶ。
弾の飛ぶ先は、触手触腕と、焼けて倒れている襲撃者たちだった。
「新兵器ィ? 関係ねぇ!!
やることは変わらねぇ!!
自爆して道ィ作れやッ!!!!」
それは喝であり、鼓舞だった。
動揺していた襲撃者たちは、活力を取り戻す。
「「「応ッ!!」」」
やられたらやり返す。
それがこの『無法の街』の常識だった。
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