第3話 風邪の日の出来事

—5月某日、月曜日の朝—


「風邪引いた……」


 体がだるいし、頭も痛い。

 きっとあれだ、昨日一昨日手洗わずにご飯食ったからだ。きっとそうだ。(そうなのであればきっと初太郎君は食中毒だね^^)

 取り敢えず、どうしよう……

 助けを呼ぶか。


「お、お姉ざん……」


 お姉さんの名前を呼ぼうとしたが喉が痛く、声を出す事ができなかった。

 じゃあスマホで連絡を……

 そうやって起きあがろうとすると、


「いや、だるぐで無理」


 まず起き上がれ無かった。病弱すぎるだろ我。

 とか思って居ると、


「初太郎様〜? 朝ですよ〜、起きて下さ〜い」


 お姉さんの声が聞こえた。お姉さんが起こしに来るってことは、時間的にはかなりヤバいのだろう。

 だけどナイスタイミング!

 僕はそうやって天井に向けて親指立てた、ル○イ修道士を思い浮かべながら。



「初太郎様〜?」


 先程より大きな声をお姉さんは出すが、僕には今声帯が無いに等しいので、ただ横になってお姉さんを待って居るだけだった。

 

「知らない天井だ……」


 けれどもふざける余裕はあった。


「初太郎様、もう十分前なのに平気ですかね……今日も車ですか」


 階段を登る音と共に、お姉さんの独り言が聞こえる。お姉さんいつもありがとう!

 それから数秒後、部屋の扉が開き「ぺたぺたぺた」と、素足で床を歩く音が聞こえる。


「初太郎様、朝ですよ。起きて下さい」


 お姉さんは優しい声で話かける。


「お姉ざん、だいじょうぐずじじゃっだ(体調崩しちゃった)……」


 そういうと、お姉さんは僕のおでこを優しく触る。愛を感じる。


「確かに、熱がありますね。取り敢えず、ご飯にしますか? っあ、食欲が無いのなら、お薬だけ持って来ます」

 

 流石にお腹が空いた。食欲はあるらしい。

 それをお姉さんに伝えようとすると、


「ぐぅ〜」


 口より先にお腹が返事をした。


「あらら。随分と可愛らしいお返事で」


 お姉さんがクスリと笑う。

 そんな時に、僕は顔を赤面させてお布団を被る。羞恥プレイされるのは違うじゃんか。


「私はおかゆを持って来ますね。初太郎様は安静にしていて下さい」


「……」


 完璧に拗ねた。お姉さんを無視する。


「すみませんご主人様、後であーんしますので許して下さい」


「待っでまず」


 即答した。美人なお姉さんにはやはりあーんされたいものだ。

 そんな僕にお姉さんは


「初太郎様は、いつまで経っても赤ちゃんですね。……かーわいい♡」


 不意にイジりとデレを兼ねた攻撃を仕掛けてきて——それからの記憶は(多分)ない。



「初太郎様、おかゆ持って来ました」


 数分後、二度寝をして居るとお姉さんの声で目が覚めた。

 目が覚めると目の前にはマスクをつけたお姉さんが居た。


「ありがと……うわっ」


 お礼を言いながら起き上がろうとすると、クラっと全身の力が抜けて天井と睨めっこする形になってしまう。


「初太郎様、平気ですか?」


 お姉さんが視界に入る。

 同時にお姉さんの長い髪が顔にかかる。バラの香りがする。


「お姉さん、髪……」


 そう言うと、お姉さんは耳に髪をかけた。


「初太郎様、すみません」


 そんなお姉さんの顔は少し赤い。照れてるのだろうか。えっちだ。


「いやだいじょばないけど大丈夫。むしろ助かる」


 やはりふざける元気はあるらしい。


「助かるってどう言う事ですか?」

 

 んな事考えて居るとお姉さんにもっともらしい返答が来た。。


「なんでもない。聞かなかった事にしといて」

 

 僕がそう言うと、お姉さんは小さく頷く。


「聞かなかった事にします。……所で初太郎様、おかゆどうします? やはりあーんが……」


「動けないのであーんよろしくお願いします」


 即答した。

 いや、あーんしてもらいたかった訳じゃないよ?

 動けないから! 動けないからお願いしただけで……



「はい、あーん」


 僕は壁に寄りかかってお姉さんにあーんされる。

 お姉さんの声に合わせて口を開け、パクッ。

 ドロッドロの米(おかゆ)を食べて口の中に広がるのはおかゆの味。それを僕は噛む事なく飲み込む。


「初太郎様、平気ですか? ちゃんと食べれてますか?」


 お姉さんが僕を心配する。お姉さんの過保護には困ったものだ。

 そんなお姉さんの手にはおかゆの入ったスプーンが見える。いや早いって。


「流石に平気だよ。でもちょっと熱いからふーふーして欲しい」


 どさくさに紛れておねだりをする。それが初太郎式おねだりだ。(シンプルに熱いのは内緒)

 

「仕方ないですね、初太郎様はいつまで経っても子供何ですから……」


 お姉さんはそう言うとすでに手に準備をしていたおかゆに息を吹きかける。

 おかゆの温度は下がったのかもしれないが僕の息子の温度は上がったのかもしれない。


「ふー、ふー。はい、初太郎様どうぞ。はいあーん」


 おかゆがまた僕の口の方へ運ばれる。

 今回のおかゆはやや冷たい。いや、当然のことなんだが。

 ……今日はこれでいいや。



「お姉さん、ご馳走様でした」


 手を合わせてそう言うと、お姉さんは笑顔で「お粗末様」と言う。


「お皿洗って来ますね。初太郎様はお薬飲んでゆっくり寝て下さい。寝ないと治らないので」


 そう言うと、お姉さんは僕の部屋から去っていった。

 同時に僕は薬を飲んでからまた、深い眠りについた。



「っあおはようございます、初太郎様」


 目が覚めると、お姉さんは僕の頭を撫でていた。きっと、ずっと一緒にいてくれていたのだろう。感謝だ。


「ん、おひゃよう」


 そんな挨拶をするとお姉さんは口元に手を置き、クスリと笑う。マスクをして居るが、お姉さんはきっと素敵な笑顔を浮かべて居るのだろう。

 そんなお姉さんに僕は疑問符を浮かべて居ると、お姉さんはそれを察したのかの如く言葉を発する。


「『おひゃよう』って。随分と可愛いおはようだなと思っただけです」


 そうしてお姉さんはものすごく自然な笑顔を浮かべる。

 対する僕は頬を膨らませ、ムスーと言わんばかりの表情を浮かべる。

 そうやっていつもの如く表情だけで会話をして居ると、お姉さんは僕のおでこを優しく触ると、優しい声で


「初太郎様、熱下がった見たいですね。よかったです」


 と。

 気づくと、体も軽くなっていた。これは薬に感謝だ。

 

「でも頭は痛いや」

 

 僕はそんな呑気な事を言うと、お姉さんは少し驚いたような顔を見せてからまたいつもの顔に戻り、僕の胸辺りを『トン、トン』と優しく叩く。


「頭痛がするのなら、まだ安静にしていて下さい」


 そう言うとお姉さんはマスクを下にずらし、僕のおでこにキスをする。


「ふぇ?」


 僕が唖然として居ると、お姉さんはクスリと笑う。


「初太郎様、おやすみなさい」


「うん、おやすみ」


 目を瞑ると、お姉さんは僕の胸をトントン叩く音が聞こえ、僕はゆっくり眠りについた。



 5時間後


 あれからお姉さんはずっと僕についていてくれていたらしく、僕が目を覚ますとお姉さんは僕のベッドの上で眠っていた。

 風邪はすっかり治ったようで、僕はすっかり元気になった。本当、お姉さんには感謝しか無いなぁ。

 

「お姉さん、おはよう」


 そう言い、お姉さんの肩を叩く。

 するとお姉さんは起きる。


「初太郎様、おはようございます」


「うん、おはよう」


「あの、その。すみません」


 挨拶を交わした後、お姉さんは僕に謝った。「勝手に寝てすみません」とかなのだろうか。別にいいのに。


「ご主人様すみません。風邪、引いてしまいました」


 僕の看病をして風邪が移るって——

 本当、ウチのメイドは困ったものだ。




————キリトリ————


 ご無沙汰です、無名です。

 この第3話、データが3回ぶっ飛んだので遅れました。

 まじで一番苦労したと言っても過言(断言)なので最後まで見てもらって感謝です。

 ではまた

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