第14話 確証なき追放


「『森の蛮人たち』のことはわかった。で、それが今回の依頼とどう関わってくるんだ?」


 王都を悩ませる野盗『森の蛮人たち』。

 古豪パーティー『アンビシャス』のリーダーパステラの追放。

 イマイチ関係が見えてこない。


「実はパステラさんが蛮人たちに武器を横流ししている可能性があるんです」

「え!?」


 冒険者が敵である野盗に武器を?


「パーティーの会計はパステラさんが担っているんですけど、この前偶然帳簿を見たんです。そうしたらミッション報酬とは別に謎の大金が入ってきていました。しかも決まって隔ての森でのミッションのあとに限って」

「たまたま多めに報酬をもらったとか?」

「私もそう思いたいです。でも考えれば考えるほど、パステラさんの動きは怪しかった。三人パーティーでは使いきれないほどの数の道具を購入したり、危険と言われる隔ての森での野宿を決行したり、深夜、私とランが寝たタイミングで一人でどこかに行ったり」

「私も聞いたことがあるわ。蛮人たちの装備の充実ぶりは追剥だけでは揃えられない。横流ししている協力者がいる。そしてそれは隔ての森に入っても違和感のない職業。つまり冒険者だと」

「それがパステラだと」

「でも! まだそうと決まったわけではありません! 取引の現場を見たわけではありませんから!」


 自分の憶測を必死に否定しようとする。ナナンは疑いと信じる心の狭間で揺れているんだ。


「だから調査してほしいんです。私の疑念が正しいのかどうか」

「なるほど。キミの勘違いだったら一安心。逆に的中していたら、そのときは追放してほしいというわけか」


 追放の根拠の調査。まあ追放代行サービスの範疇か。その分報酬は増やさせてもらうけど。


「私はアンビシャスのファンでした。初期メンバーであり生き残りであるパステラさんのことを尊敬しています。彼に誘われた時は二つ返事で加入しました。それはランもそうです」


 尊敬するリーダーを追放するかもしれない。ナナンの表情が終始暗いのはそれが理由。


「でも、私が憧れたのはアンビシャス。アンビシャスを汚すのなら、たとえパステラさんでも容赦したくありません。どうか依頼を受けていただけませんか?」


 悲痛な声で頭を下げる。


 厄介な案件だ。相手はAランク冒険者。しかも森の蛮人たちというゲリラ組織がバックに控えている可能性もある。


 藪をつついて蛇が出てきたら事務所運営どころじゃない。たとえ一週間ぶり二件目の依頼だとしても断る理由は十分だ。


 ま、一回り年下の少女のお願いを聞かないほどオジサン冷たくないけど。


「ナナンの覚悟はわかった。受けよう」

「本当ですか! ありがとうございます!」


 ぱあっとひまわりのように明るい笑顔。純真無垢な顔立ちにとてもよく似合っている。きっとこれがナナンの本来の表情なんだろうな。


「まったく。なにを惚気ているんだか」


 少女に感謝されて悦に浸っていると、案の定クックに小言を言われてしまった。

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