第20話 手をね……

「ねえ、いおりん?


 相談があるんだけど……


 聞いてくれる?


 この夏休み、


 いおりんのお陰で、


 伊織君といっぱい出かけたり、

 お喋りしたりできたんだけど……


 それはすごく楽しくて、


 嬉しくて、


 毎日充実した時間だったんだけどね……


 その……


 あのね……


 それだけじゃなくて、


 ……


 …………手をね、


 手を……


 伊織君と、


 繋ぎたいな……


 って、思っちゃって。


 同じ時間を一緒に、

 近くで過ごせることは、


 すっ~~ごく、


 楽しくて、

 幸せなんだけど、


 ……


 …………


 出来れば、


 手をね、


 少しの時間でも、


 繋いでくれてたらなぁ……って。


 これって、贅沢なのかな?


 伊織君と、

 一緒に過ごせるだけでも、

 幸せなのに……



 その……


 なんだか……


 触れていたい……


 ……んだよね。


 なんでだろう?


 触れていたいし、

 撫でてもらいたい?

 ような……


 こんな気持ち、

 今までなかったから、

 どうすればいいか……

 分かんなくて……


 ……だって!


 いおりんだって!

 いおりんを撫でてると、

 気持ちいいもん!


 いおりんも、そうでしょ?

 撫でられたり、

 触れられたり、

 抱き締められたら!


 嬉しいでしょ?


 だから私も、

 こうやって……


 こう……


 ぎゅ~~~って


 その……


 してもらいたい、っていうのか……


 なんでかは、分かんないよ!?


 けど……


 ちょっとだけでいいから、


 家に帰るまでの間とか……


 手だけでも……


 繋ぎたいな……って……


 でも、


 そんなこと言えないじゃん!


 手、繋ごうなんて……


 恥ずかしいし……


 変態とか思われちゃうから。


 どうすれば、

 握ってくれるかな……


 暗くて道が見えないところまで行って、

 危ないから、手を引っ張ってって、

 お願いする?


 ……って!

 暗くて、ひと気のないところに、

 二人っきりでって!

 よけい怪しいし!


 じ、じゃあ?

 足、挫いちゃったから、

 手、繋いでって言う?


 ……


 ……歩けないから?


 ……なら、お姫様抱っこ!?


 そ、そんなこと!!

 恥ずかしくてっ!


 ……


 …………はぁ、


 やっぱり贅沢な悩みなのかな?


 ちょっと触れるだけ……


 手を握るだけなんだけど……


 ねぇ、いおりん?


 私……


 おかしくなっちゃったのかな?


 はぁ……」




 ぎゅ~~~っ!!



(……


 手を繋ぐって?


 昔、よく握ってたじゃん?


 小学校の集団下校の時とか?


 手を繋ぎながら帰ったと思うけど?


 今さら?


 ……


 ……でも確かに、今やると、


 なんか恥ずかしいような……


 まあ、今度、しれっと手を繋いで、

 帰ろうかな?


 お姫様抱っこは、

 ちょっと……あれだけど……)

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