第19話 花火をね……

「こんばんは!


 いおりん!


 あのね!


 聞いて!聞いて!


 伊織君がね!


 今度、街の花火大会に、

 一緒に見に行こうって!

 誘ってくれたの!


 だから今から楽しみなんだ!

 花火大会!


 それと、夏祭りにも行こうって!


 すごいでしょ!?


 今年の夏は忙しくなりそう!


 去年は受験勉強ばっかで、

 どこにも行けなかったから、

 今年はその分、いっぱい遊ぼうかな!


 楽しみだなぁ……


 でも、よく考えたら、

 去年もなんだかんだいって、

 ずっと伊織君と一緒だったからね。

 二人で勉強してたし。


 でね?

 なんだか不思議なんだけど……


 今まで何度も伊織君と、

 花火、見に行ったことあるんだけど、


 なんか……


 違うんだよね、


 今回は。


 この……


 ドキドキというか……


 胸の高鳴りってゆうのか……


 今まで楽しいイベントがある時、

 はしゃいだり、

 楽しみで眠れなかったりしたんだけど……



 その……


 今回もそうなんだけど……


 なんか違うの。


 うまく表現できないんだけど……


 花火を見ることに、

 ドキドキしてるんじゃなくて……


 伊織君と一緒に見に行けることに、

 ドキドキしてるみたいなの。


 今までだって、

 何度も一緒に行ったんだよ。

 花火大会も、夏祭りも。

 別に珍しいことじゃないんだけど……


 きっと伊織君も、

 いつもの感じで、

 誘ってくれたんだと思うんだ。


 でも、

 なんでだろう……


 今回は、

 なんだか変なんだよね。


 でね、もしかして……?

 って、考えてみたら、


 イベントが楽しいんじゃなくて、

 伊織君と二人でいるのが?

 楽しいのかな?


 ……って。


 よく考えたら、

 受験勉強の時も、

 伊織君と一緒だったから、

 頑張れたのかも?


 そう……


 なの……


 かな?


 伊織君と一緒だから、

 嬉しいのかな?


 学校の帰りも、

 二人で帰れるから、

 楽しいのかな?


 ……


 …………


 なんだか伊織君のこと考えてると、

 眠れないよぉ……


 ぎゅ~~~


 ……


 ………伊織君のこと、意識しちゃうと、


 よけいにドキドキしてきちゃうの!


 ぎゅ~~~!!


 ねえ、いおりん?


 眠るまで、

 こうやって、

 抱き締めてても……



 いいかな?」



 ぎゅ~~~!!



 ぎゅ~~~っ!!



(……


 ………僕も、なんかおんなじ気持ち。


 なんだか、こんな気持ち初めてで、


 僕も眠れなくなるんだけど……)

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