第8話 気になる子がね……

「どうしよう!!

 いおりん!


 あのね、今日のお昼休みにね、

 友達とお昼食べてた時に、

『このクラスで気になる子、いる?』

 って話題になって。


 私は無視してたんだけど、

 あまりにもみんなが、しつこく聞いてくるから、

 つい、

『そんな人いないから!』

 って怒鳴っちゃったの!

『このクラスの男子って、全員子どもっぽいし!』

 って言っちゃったの。

 そしたらね、タイミング悪く、

 ちょうど横を、

 伊織君が通っちゃったのー!!


 私の言ったこと、全部聞かれちゃってたかも……


 私、驚いてた、体がビクッってなっちゃって……


 伊織君は何も言わずに、

 笑って通り過ぎてったんだけど……


 ぁぁぁ……

 どうしょぅ……


 絶対に聞かれてたよね、


 子どもっぽいって、

 気になる男子なんて、いないって……


 伊織君はそんなんじゃないのに……


 他の男子と比べて、

 全然カッコいいし、

 優しいし、

 子どもなんかじゃないのに……


 どうしよう……

 変な風に思われちゃったかな?

 自分はそう思われてるんだ、って思っちゃったかな?

 好きでもないのに、一緒に帰ってたとか思っちゃったかな!?


 そんなことないのに!


 あーもーぅ!

 どうしよう!


 いおりん、どうしたらいい?


 明日、なんて言い訳すればいい?

 どうやって?


 気になる男子なんていない、って言っちゃったけど、あれ嘘ですって?

 どういう話の流れで、そんな話題になるの?

 本当は気になる人、いるんですって?

 なんでわざわざ、そんなことを伊織君の前で話すの?

 それじゃあ、まるで伊織君のことが好……


 って!!


 それじゃあ告白してるようなもんじゃん!


 どうしよう、いおりん?


 どうしよう……


 素直に話した方がいいかな?

 昨日、話してたことは、

 みんなの前で、建前として言ったことで……


 別に伊織君が子どもっぽいって言う意味で言った言葉じゃないよって?


 ……その前に、

 一緒に帰ってくれるかな?


 どうしよう……どうしよう……


 本当は違うってこと……


 いおりんも、協力して!


 私の思いが、伝わりますように……って!


 お願いだよ!


 おやすみなさいっ!」



 ぎゅ~~~っ!!



(……


 あの時のこと?


 別にそこまで気にしてないけど……


 明日、帰りにでも、

 それとなく話しでも、

 聞いてみようかな?)

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