第24話「動き出す計画」
千堂グループ、それは日本だけでは無く今や世界を牽引する企業グループだ。様々な分野で成功を収め最新の謎のテクノロジーを用いて国と同等の資本や権力を持つとまで言われている存在だ。そのグループの傘下に俺は会社ごと所属している。
「まさか会長の許可持ちとは……せいぜい援助だと思ったのにな」
「あの人は使える人間には惜しみなく協力するさ」
零音の言葉に頷くと俺はポカンとしている村の人間に向き直って笑う。もう負けは絶対に有り得ない。世界的な企業グループが味方に付いたのだ。
「だから万に一つも岩古に勝ちは無い」
「こうちゃん、話に付いていけないんだけど……」
だが父や月は状況を理解していた。今の俺の言葉の意味を……なぜなら俺に味方したのは政府にすら物申すことの出来る権力者だ。ニュースや新聞を見てれば分かるレベルの圧倒的な存在だった。
「社長、まさか……こちらは?」
「ああ、リオン、紹介するコイツが遠野 皐雪だ」
あぐらの上から皐雪を下ろし立ち上がると俺は改めて仲間達に先ほど嫁になった女を紹介する。
「これが実物……失礼しました。わたくし社長秘書の洋野リオンと申します」
「は、はぁ……ど、ども」
皐雪も初対面の三人に驚きながら、ぎこちなく挨拶を返している。
「それと、もう俺の女に戻ったから、その辺の予定変更の話もするからな」
「「「はっ?」」」
「えっと、近い内にこうちゃんのお嫁さんになります、よ、よろしく?」
俺の宣言で呆然と固まった三人は皐雪の言葉で時が動き出していた。人間って驚くと本当に固まるもんだなと驚かされる。
「いやいや幼馴染は最後に無理やり奪って俺の物にしてやるって事前の話では言ってましたよね社長!?」
「大幅な計画修正が必要か……最終目的が既に完遂してるなんて」
「そうよコウさん!! 旦那の前で略奪して村中で恥をかかせ敗北宣言をさせた後にプライドをズタボロにするって計画書に有るんだけど!?」
リオンや甲斐夫婦が俺の事前に用意しておいた計画書のコピーをバシバシ叩きながら予定が狂ったと怒っている。
「しかも子供を先に懐柔し相手に絶望を与え分断し最後は間男を海外の密輸業者に拉致させ、行方不明状態になり弱った状態の二人を励まして家族になり落とすシナリオだったはずです、この計画書では!?」
そしてリオンが俺の計画を全てバラした。心なしか皐雪や皆の見る目が凄まじく痛ましい人間を見る目になって正直すごく辛いです。
◇
「と、とにかく、イレギュラーは有ったが問題無しだ三人とも!!」
「こうちゃん……案外、闇深かったんだね、本当ごめんなさい、反省してます」
深々と土下座されて逆に恥ずかしかった。皐雪が殊勝になると調子が狂うから勘弁して欲しい。かがんで皐雪の肩を抱くとそのまま抱き寄せる。
「うっせ、じゃあもう何が有っても離れるな、いいな!?」
「うん、今夜はハードでも私、頑張るから!! お義母様から許可もらったし!!」
色々とコイツには言いたい事が有るが、とにかく足場は固めた。後は鉄雄の実家を抑えれば村の三割は抑えられる。残り七割いや遠野家の今の力を考えて実際は村の二割だ。ここまで弱体化しているとは思ってなかった。
「つまり村の80%は敵だ、三人とも」
「思い出しますねローマでの戦いを……」
「そうだなリオン、毎回周りは敵だらけだった」
リオンと出会ったローマでも俺達は敵だらけだった。それを思い出すと自然と笑みが出る。
「こうちゃんって海外行ったこと有るの!?」
「まあな、それよりも今は話し合いだ……ん?」
改めて三人との話し合いと今後の予定を全員に話そうとした時だった。廊下からドタドタ足音が聞こえる。そのまま襖が開けられると千雪ちゃんと後ろには鉄雄と月の子供達もいた。
「ちょっと母さん、鋼志郎さんも大丈夫!? 家の中で人が倒れてて……」
「なっ!? 社長、こちらは?」
「あ~、リオンは驚くか……この子は皐雪の娘の遠野千雪ちゃんだ」
リオンは前から皐雪の昔の写真を何回か見せていた。その写真と千雪ちゃんがそっくりだから驚いたのだろう。
「なるほど、つまり社長の娘さんに?」
「まあ将来的にな? だが子供達が来ちゃったか……」
千雪ちゃん達の前で計画の詳細は話せないし色々とショッキングな話もするから隠したい。俺は大人組の顔を見て頷くと一時解散し夜にもう一度、今度は遠野の屋敷に極秘に集まる事を伝え、この場は解散となった。
◇
「じゃあ後ほど……それで父さん、エサに食いついたか?」
「ああ、これだけ派手に立ち回ったのだ。呼び出しは確実だろう」
確かに三人が暴れ回ったから普通にバレるか。だが逆にこれなら俺の実家は襲撃されたという話にもできるな。
「分かった。じゃあ俺も行く……リオン!!」
「はい、社長!!」
「下の町に戻ってアレの準備を、それと書類一式の用意も今日中に」
明日から始まるドキドキの村改革の第一弾には何より根回しと公的権力の力添えが必須だ。だから準備は念入りにする必要が有る。
「かしこまりました、書類は既にこちらに」
「よし、あと相手からの妨害または実力行使が有ったら、分かってるな?」
「はい、訴訟も視野に入れた行動……ですね?」
そこら辺は弁護士によく注意されていた。俺やリオンは元が腕力で解決してきた事が多く会社を持つようになってからもパワープレイが目立った。その度に年下の顧問弁護士に怒られたもんだ。
「竹之内先生に厳しめに言われてるからな」
「
真莉愛さんが笑って言うが顧問弁護士の名が竹之内 霧華ちゃんだ。凄い美人のハーフで金髪碧眼とか冗談みたいな容姿の弁護士で優秀な人だ。俺は何度もデートに誘ったが一度もOKは貰えなかった。
「下手なことすると後で俺が怒られる。霧華ちゃんって名前で呼ぼうとしただけでセクハラ認定受けそうになったしな、この間も電話で……」
「ねえ、こうちゃん、それって女の話?」
後ろから低い声が聞こえ振り返ると皐雪と千雪ちゃんまで睨んでいた。村に戻って以来、初めて俺は恐怖を感じた。
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