第41話 三人で歩む道

「たしか四季夏葉のイベントの時に出会った……」

「はい、共田歩です」

「同じく御供早穂です。お久しぶりですね」

「うん、そうだね。そっか、二人もこの辺りの子なんだね」



 夕希さんの言葉に白いジャージ姿でショルダーバッグを背負った歩が頷く。



「はい。あ、向かい失礼しますね」

「どうぞどうぞ」

「では、失礼いたします」



 紺色のジャージの早穂さんが上品な一礼をし、歩と一緒に向かいに座る。そしてとても近い距離で座った二人は吹いてきた風を感じながら気持ち良さそうな顔をした。



「はあ……風が心地いいなあ」

「ふふ、そうですね。歩さん、芽衣子が用意してくれたお飲み物を飲みながら休憩しましょう」

「うん、そうだね。芽衣子さんの淹れてくれるお茶は本当に美味しいし、元気が出てくるから楽しみだなあ」

「私もそう思います」



 二人は幸せそうに笑いあっており、その様子を見ながら俺は二人が恋人同士である事を思い出した。



「そういえば、二人は恋人同士なんだったな」

「はい、芽衣子さんも含めて三人で交際してます」

「初めは私で次が芽衣子ではありますが、私も芽衣子も歩さんの事を一緒に愛していますし、自分が歩さんと二人きりになる事が出来る時間という物をしっかりと決めた上でこの関係を続けていますよ」

「もちろん、僕も早穂さんと芽衣子さんを同じくらいに愛していますし、優劣なんてつける気はありません。それが二人からの愛を受け止めた上でしっかりと愛していくと決めた僕の想いですから」



 歩は真っ直ぐな目で言う。その目には一切の迷いはなく、そんな歩を見る早穂さんの目も信頼の色が浮かんでいた。



「……でもさ、やっぱり世間からの目とかはキツくないのか? 早穂さん達もそうだろうけど、歩なんて二股してる男みたいな見方をされるだろうし……」

「基本的に伝えてる人は自分達で決めてはいますけど、たしかに中には不誠実だと思う人はいると思います。それに、同じくらい好きだという気持ちもあるので、公的に婚姻届を出す事だって出来ないです。どちらかを選んで書く事になりますから」

「やっぱりそうだよな」

「そういうのってキツいとは思わないの?」

「世間の目や法律が厳しくともそれが私達の決めた道ですから。それに、理解をして下さる方が私達にはいますし、お父様達も応援して下さっています。なので、私達は私達の道をゆっくりと歩いていきます。三人で並んでゆっくりと」

「自分達の決めた道……」



 その言葉は俺にとても重くのし掛かった。三人との関係に俺が悩んでる中で歩はしっかりと早穂さん達との関係について決めていて、その道を歩んでいく決意を固めている。その姿はとてもかっこよく見えていた。


 そんな俺の姿を歩は見ると、にこりと笑いながら話しかけてきた。



「よかったら、お二人も一緒に歩いてみませんか?」

「え?」

「どうやらランニング中だったみたいですけど、歩くのもいい運動になりますから」

「私は賛成。大和君は?」

「俺もいいですけど……」

「それなら決定ですね。ふふ、楽しみです」



 早穂さんは手を握り合わせながらにこりと笑う。そしてそれから数分の間、俺達は休憩を続けた。

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