第42話 歩む恋の道
ある程度休憩した後、俺達は歩達と一緒に公園の中を歩き始めた。歩達は散歩部という部活動を土日祝で個人的に行っているようで、時には見学者という名のゲストもいるようだが、基本的には二人だけの活動として行っているそうだった。
その散歩部の活動として使っているのが『妖怪さんとGO!』というアプリで、そのお題に沿って活動をしているらしく、今日は“自由に歩いて、思い出を一つ作る”というお題なのだそうだ。
「なんかスゴいな、自分達で部活動を作って活動してるなんて」
「そうだね。でも、その活動の数だけ色々な事もあったんだろうね」
「はい。色々な人と出会いましたし、色々な物も見てきました」
「それらは全て私達の思い出になっています。もちろん、今日のお二人とのこのお散歩も」
「それならよかった。俺達もこんな風に誰かと散歩する機会は中々なかったし、いい経験になりそうだ」
「お散歩は楽しいだけではなく、色々なものを発見する方法でもありますからね。ゆっくり歩いて色々なものを見つけていきましょう」
早穂さんの言葉に頷いた後、夕希さんは早穂さんに興味津々な様子で話しかけ始めた。そんな二人の様子を見ていた時、隣を歩いていた歩が俺に話しかけてきた。
「大和さん」
「同い年だし、さん付けで呼ばなくていいんだぞ?」
「それじゃあ大和君。もしかして何か恋の悩みを抱えてる?」
「え……そ、そうだけど……よくわかったな?」
「僕も少しずつそういうのがわかるようになってきたんだ。夕希さんとの仲は悪くなさそうに見えるけど、もしかして他の悩みだったかな?」
「……ああ。実は夕希さんが好きな中でも他の子達から好意を向けられてて、初めは受け止めた上でしっかりと断るつもりだったんだけど、段々にその子達にも惹かれてる自分がいて……」
「そんな自分が許せないとか?」
「そんなとこだな。夕希さんが好きなのは間違いないし、その子達に少しずつ惹かれてるのも間違いない。だけど、やっぱり全員との関係を続けながら好意を向けられ続けたいっていうのは不誠実な気がして……」
歩は少し考えた後ににこりと笑った。
「たしかに世間から見たらあまりいい印象は持たれないよ。だけど、好きなら好きでもいいんだと思う」
「そう……なのか?」
「うん。夕希さんやその子達さえいいなら別に関係は続けてもいいだろうし、やっぱりそれはダメだと思うならしっかりと一人だけ決めて他の人達にはその事を伝える。それが一番だと僕は思う」
「一人だけ決めて……」
俺は夕希さんに視線を向ける。小さい頃から好きで、今だって色々な事を一緒にしたいと思える存在だ。だからこそ、その好きは揺るがないし、それが一番大切にするべき物なんだと感じた。
「……なんか答えが見えてきた気がする」
「それならよかったよ。応援してるね、大和君の恋の道」
「ありがとう、歩。今後も色々相談させてもらっていいか?」
「うん、もちろん。あ、それと……」
「ん、どうした?」
歩はクスクスと笑った。
「複数の愛情を向けられてる君へ一つだけアドバイス。僕達のような男性側が思ってるよりも夕希さん達のような女性側って結構知らない内に色々な事を知っていたりしていたりするんだ。ようは恋のためなら活動的になるって感じだね」
「それがどうしたのか?」
「だからね、実は僕達が知らないだけで色々な出来事が裏で起きていたり進んでたりするんだ。その事だけは覚えていてほしいし、ちょっと気に留めてみてほしいな」
「なんだかよくわからないけど……まあ、わかった」
「うん。さて、それじゃあ散歩部の活動を再開しようか」
その言葉に頷いた後、俺達は自分達が満足するまで思い出作りのための散歩を続けた。
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