第31話 鷲と鷹と恋の嵐と
『いただきます』
クッキーが焼き終わり、紅茶も淹れ終わった後、俺達は席について手を合わせた。こんがりと焼けたクッキーはとても形がよく、だいぶ量を焼いたからかお土産用として部員達で少し小袋に詰めてもまだ残る程だった。
香ばしさと甘い香りを漂わせるクッキーはとても美味く、紅茶にも合うのでいいティータイムにはなっていたが、俺の周囲にはさっきの話に興味を持った後輩達が集まっていた。
「柴代先輩! やっぱりその好きな人とは付き合いたいんですか?」
「小さい頃からの恋心ってなんだか素敵ですね。はあ……憧れちゃう」
後輩達、特に女子が目を輝かせている。やはり女の子達はこういう話が好きなんだろうか。
「付き合いたい、というかは付き合う。絶対に」
「情熱的~!」
「私もこんな風に愛されてみたいです~」
「し、柴代先輩! どうやったらそこまでの愛を持つことが出来るんですか!?」
「俺達に御指南をお願いします!」
「し、指南ってそんな大層なものじゃないって……」
男子達も少しずつ熱が入り始めたようだ。そんな中、俺は天鷲達に視線を向ける。天鷲は少し俯いていて、白鷹はそんな天鷲の事を少し心配そうに見ている。
「天鷲……」
俺は天鷲に声をかけようとした。すると、天鷲は顔を上げて俺の口に何かを突っ込んだ。
「んぐっ……これは、天鷲が作ったクッキーか?」
「はいです。美味しいですか?」
「うん。しっかりと生地を混ぜたり焼き時間もきっちりしてたからかとても美味しい」
「私だって柴代先輩にこんなに美味しいクッキーを焼いてあげられるのです」
「あ、天鷲?」
「朝香……?」
俺と白鷹が天鷲の様子に疑問を抱く中、天鷲は覚悟を決めたような顔で口を開く。
「決めました! 柴代先輩!」
「お、おう……?」
「その夕希さんがスゴい人なのはわかりました! でも、私だって負けません! これが恋だっていうのなら、私は……柴代先輩を私にメロメロにさせてみせます!」
「天鷲!?」
「あ、朝香!?」
その言葉に他の女子達は更に黄色い声を上げ、一年生と三年生の男子が囃し立てる中、二年生の男子が悔しそうな顔をする。どうやら天鷲に気があったようだ。
「え、えーと……」
「柴代先輩、前に言ったのでお願いしますね」
「それはまあいいんだけど……」
「あと」
「ん?」
白鷹は俺の耳に顔を近づけてくる。
「だったら、私にもチャンスがあって良いですよね?」
「白鷹!?」
「あの日のキス、しっかりと意味はあるものですから。相手が強大だったり親友だったりしても負けません。私だって柴代先輩の事が好きなんですから」
「白鷹……」
顧問の先生が微笑ましそうに見てくる中、天鷲と白鷹が俺をジッと見つめてくる。俺はそれを見ながら二人からのアタックにも耐えながらしっかりも答えを出す日を決めないといけない生活が始まる事に対して覚悟を決めるしかなかった。
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